「どうした?」翔太が尋ねた。「彼女は逃げたりなんてしないわ。だけど、彼女がいなくなったってことは、もしかしたら誰かに捕まったか、害されたんじゃないかしら?」香織は由美の失踪と松原家や橋本家に関係があるのではないかと強く疑った。しかも、あの悠子もろくでもない人間だ。由美が一人でいて、もし本当に捕まったり、害されたりしていたら……香織はそれ以上考えるのが怖くなった。胸が重苦しくなる。どうしよう?圭介も香織と同じような考えだった。生きている人間が、無事なのに突然姿を消すわけがない。つまり、彼女は害された可能性が高い。たとえ命が無事だとしても、どこかに監禁されているかもしれない。圭介は香織の背中をそっと撫でながら言った。「心配しないで、俺が探してあげるから」香織は彼を見上げた。言葉には出さなかったが、その視線は明らかに「どうしてもっと早く、このことに気づかなかったの?」と言っていた。しかし、彼女もわかっている。圭介にはそんな義務はない。彼を責めるべきではない。ただ、由美が危険にさらされているかもしれないと思うと、気持ちが焦ってしまい、冷静でいられなくなるのだ。翔太も香織の目から非難の意図を読み取り、すかさず愚痴をこぼした。「水原さんに会いに行ったんだけど、彼に会わせてもらえなかったんだよ」この時ばかりは、彼は圭介を義兄と認識することなく、単に「水原さん」と呼んだ。翔太の心の中では、圭介に対する不満が大きく膨らんでいた。「……」圭介は言葉を失った。「香織……」彼は言い訳しようとした。しかし、香織はそれを遮った。「わかってるわ、これはあなたのせいじゃない」彼女はただ、自分を責めた。感情に引きずられて離れてしまったことを。もし自分がいれば、由美は自分を頼れたかもしれない……そうすれば、ここまで事態が悪化することはなかったはずだ。香織は今、頭の中が混乱していた。少し冷静になる必要があった。「翔太、もうお酒は飲まないで。しっかりして。後で、あなたにお願いしたいことが出てくるかもしれないから」翔太は頷いて、「わかった」と返事をした。……帰り道、香織の気持ちは一向に落ち着かなかった。「知ってる?憲一と悠子の結婚式で、あの長い横断幕をかけたのは悠子だったのよ」彼女は圭介に
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