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第0115話

「書類を」輝明が振り返り、綿に促した。

綿は自分の書類を差し出した。

窓口の職員が二人を見上げて言った。「お二人とも離婚を本当に決めているのですか?一緒に暮らしている間には、乗り越えられない壁はないものですよ。実は——」

「決めました」綿は彼女の言葉を遮った。

二人の間には、確かに乗り越えられない壁があった。

彼が彼女を愛していないことが、その最大の壁だった。

輝明は黙って職員を見つめていた。冷たい表情を浮かべた彼は、接しにくそうな雰囲気を醸し出していた。

職員もそれ以上何も言えず、「離婚には一か月の冷却期間があります。今日手続きしてもすぐには離婚できません。一か月後にもう一度来ていただく必要があります」と説明した。

「わかりました」二人は口を揃えた。

これが、綿と輝明が最も息の合った瞬間だったかもしれない。

職員はしばらく二人を見つめ、何か言いたげだったが、結局言葉を飲み込んだ。

その時、職員の電話と綿の電話が同時に鳴り響いた。

輝明は綿を見て、綿が携帯を取り上げて脇に行った。「パパ、どうしたの?」と笑顔で話しかけた。

しかし、彼女の笑顔はすぐに凍りついた。「深刻なの?」

輝明は眉をひそめ、何かが起こったことに気付いた。

綿は電話を切り、輝明に向き直ると、職員が電話に出ているのを見た。

「書類はここに置いておくから、離婚手続きを進めて。私は先に行ってもいい?」綿は輝明に尋ねた。

「何があったの?」輝明は不思議そうに尋ねた。

綿は言いたくなさそうに、職員に目を向けた。職員も忙しそうで、何度も「はい、はい」と答えていた。

綿は焦っていたが、職員が電話を切るまで待つことにした。

しかし、なかなか電話が切れず、やっとのことで電話を切った職員は「少しだけ待ってください、10分だけです!」と言って席を立った。

綿はその場に立ち尽くし、時間を確認した。

心配でたまらない綿は、輝明の腕を掴み、「輝明、今は手続きをやめよう。別の日にしましょう」と言った。

そう言うと、書類を持ち上げ、大急ぎで外に走り出した。

「綿、一体何があったんだ?」輝明は訳が分からず、物を持って追いかけた。

綿が車のドアを開けようとすると、輝明がそれを止めた。

綿は焦りながら、「おじいちゃんが倒れて、今第二病院で救急搬送されているの!」と
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