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第0114話

綿はそう言うと、休憩室を出た。

ドアが閉まると同時に、彼女の手は拳を握りしめた。背中をドアに押し付け、心臓が速く鼓動し続ける。何かに引っかかっているような痛みで、息が詰まりそうだった。

輝明に対する気持ちは、もう麻痺してしまったと思っていた。もう愛していないと自分に言い聞かせていた。それはただの自己欺瞞に過ぎなかった。

彼が再び離婚を口にしたとき、心臓が一瞬止まった。

この結婚生活は、結局離婚という形で終わりを迎えることになったのだ。

綿は深呼吸を繰り返し、気持ちを整えようとした。だが、彼女自身も気づかぬうちに、涙が一滴、そっと頬を伝った。

彼女は急いで仕事に戻ることにした。忙しさで心を満たすことで、悲しみの感情に押しつぶされないようにするためだ。

休憩室の中で、輝明は離婚協議書を握りしめた。指先で眉間を押さえ、重い息を吐いた。

綿と離婚するというのに、全く気が楽にならない。

しばらくすると、休憩室のドアが開いた。

「明くん!」嬌が入ってきた。

「うん」輝明は微笑みかけた。「仕事はどうだ?」

「まあまあよ」嬌は輝明の隣に座り、うつむいた。「最近、背中がずっと痛むの」

「傷口が痛むのか?」輝明が彼女に尋ねた。

彼女はうなずき、唇を尖らせて言った。「エアコンに当たりすぎたのかもね」

彼はふと、あの男が言った言葉を思い出した。

「高杉社长、嬌は勇敢で賢明な方だ。君のために、海で命を落としかけた。普通の女の子に過ぎないのに、君のためにそんな勇気ある行動を取るなんて、本当に敬服する……」

その言葉を思い出すたびに、輝明は嬌のことを思い、胸が痛む。

「後で、良い調養師を探して君のケアを頼むよ」彼は嬌の肩を軽く揉みながら、目には愛情が溢れていた。

嬌は明らかに感じた。今日の輝明は、特に自分に優しい。

綿は病室から出てくると、ちょうど輝明と嬌に出くわした。

陸嬌は満面の笑みを浮かべていた。綿は何も聞かずとも、輝明が離婚の話をしたことを察した。

嬌が輝明の妻になることを夢見ていることは明らかだった。彼女がこんなに嬉しそうなのも当然だ。

輝明は綿を一瞥すると、深い目で見つめた後、何も言わずに立ち去った。

輝明が去った後、嬌の笑顔はすぐに消えた。彼女は綿の前に立ち、冷たい笑みを浮かべたまま鼻で笑い、得意げに去っていった。

綿がすぐに前
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