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第 0307 話

嬌はそれを聞いて、すぐに首を振った。「嫌よ、お母さん。私は輝明と結婚したいの!」

彼女はこの一生、輝明以外の誰とも結婚しない。

どうしても彼に自分を愛させて、結婚してもらうの。どんな手を使ってでも!

「好きにしなさい」弥生は鼻を鳴らし、バッグを手に取って言った。「今日は用事があるから、出かけるわ」

「何か食べたいものがあったら、家の家政婦に言って。作って持ってきてもらうように」

そう言って、弥生は去っていった。

嬌は弥生の後ろ姿を見つめ、心がずしりと沈んだ。

陸川家は彼女によくしてくれるが、多くの場合、心の底からの深い愛情を感じられない。

今のように。

彼女はこんなに多くのショックを受けているのに、弥生はたった二言三言の慰めで行ってしまった。

これが裕福な家庭の親子関係なのか?

他の家族もこんな感じなの?

弥生は病室を出ると、深いため息をついた。嬌をどうすればいいのか、本当にわからない。

もし彼女が普通の家庭の人を好きになったなら、陸川家の力で圧力をかけて、彼女と結婚させることもできる。

でも、嬌が好きになったのは輝明。陸川家は高杉家に対して何の手も打てない。

弥生が階下に降り、エレベーターに乗ると、ちょうど乗り込んできたのは綿だった。

今日は綿の精神状態が本当に良く、姿勢もまっすぐで、肩と首筋が華奢で美しい。彼女は下を向いて手に持ったカルテをめくっており、その真剣な様子は確かに美しかった。

エレベーターが四階に止まり、綿は降りていった。

弥生は綿の後ろ姿を見つめ、思わず後を追って出てしまった。

綿は問診カウンターに向かい、二人の看護師と何か話している。時折微笑み、その姿は優しくて大らかだ。

弥生は静かに見つめていたが、綿が振り向いて、偶然彼女の視線とぶつかった。

綿は眉をひそめた。彼女、どうして自分を見ているの?

盗み見がバレてしまい、弥生は慌てて咳払いをし、バッグを持って体をくねらせながら去っていった。その様子はどこか気取っている

綿:「……?」

綿は理解に苦しんだ。

綿は仕事に戻り、弥生は彼女の見えないところまで歩くと、また振り返って綿を何度も盗み見た。

おかしい。何かに引き寄せられるようで、彼女を見ずにはいられない。

弥生は自分と綿の口論を思い出し、少し後悔さえ感じた。

しかし、振り返って弥生は眉をひそ
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