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第66話

雅之は言った。「立って、じゃないと困るんだけど」

里香は急いで起き上がった。その時、雅之の左手が包帯で吊られていて、額にも包帯が巻かれているのに気づいた。なんだか滑稽だ。

どうやら全部外傷みたいだ。

里香はほっと息をついて、雅之を見て言った。「大丈夫なら、どうして早く言わなかったの?」

雅之は無邪気にまばたきした。「泣き声で目が覚めたんだ」

雅之は元々昏睡状態だったが、意識がぼんやり戻り、里香が泣いているのを聞いた。

その瞬間、雅之の心は激しく揺れた。

雅之は里香を邪魔せず、静かに見守っていた。里香が見知らぬ遺体に向かって泣いている姿は、気絶してしまいそうだった。

雅之は里香に何かあったら困ると思い、無理して起き上がり、ちょうど里香が倒れそうになったところを支えた。

里香は急いでそっぽを向いて、顔を拭いた。

その時、看護師が入ってきて、二人が向かい合って立っているのを見て戸惑いながら、「何をしているんですか?」と尋ねた。

里香「あの、私はこの人の家族ですが、彼は大丈夫ですか?」

看護師「お名前は?」

里香「二宮雅之」

看護師は手元の記録を見て、「左腕に軽い骨折、頭に4針縫いましたが、深刻ではありません。ただし、軽い脳震盪の可能性があるので、数日間入院して観察したほうがいいでしょう」と答えた。

「わかりました」里香はこくりとうなずいた。

入院手続きを済ませて病室に戻ると、雅之はすでにベッドに横たわっていた。里香が入ってくると、雅之の暗い視線が里香の顔に落ちた。

自分の窮状を思い出し、里香は雅之を睨んだ。「何を見てるの?こんな美女、初めて見た?」

雅之の唇に微笑みが浮かんだ。「里香ちゃん、もし僕が本当に死んだら、君はどうする?」

「何バカなこと言ってんの」

里香は顔をしかめて雅之を見た。

その瞬間、里香は本当に怖かった。雅之が本当に死んだらどうなるかなんて考えたくもなかった。

「ただ気になっただけだよ。君があんなに悲しそうに泣いていたから、心中するのかなって」

「心中?あんたのために?」

里香は笑い飛ばした。「それはあまりにも馬鹿げてるわ!あんたにはそんな価値ないよ!もしあんたが死んだら、離婚なんて面倒なことしなくても、大きなマンションに住めるし、大金も手に入れてイケメン探しに行くわ!」

里香は椅子を引き寄せて座り、その
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