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第59話

里香は一瞬表情を変え、すぐに微笑んで「ありがとう」と言った。

江口は微笑んで、「どういたしまして。一緒に来てください」と答え、里香を連れて階段を上がり、大きな部屋に案内した。

江口は着替え室からいくつかのドレスを取り出し、「これらは全部未使用のものです。好きなものを選んでください」と言った。里香は自分が着ているものと同じ黒いドレスを指差し、「これにします。連絡先を聞いてもいいですか?後で洗って返すか、新しいものを買って返しますから」と言った。

江口は笑って、「いいよ。ただのドレスですし。先に着替えてください。外で待っています」と言った。里香はうなずいて、「わかりました」と答えた。

着替え室のドアが閉まった。

里香は自分が着ているものとほとんど同じドレスを見て、少し戸惑った。それでもしばらくして、彼女は着替え室のドアを開けて笑顔で「本当にぴったりです。ありがとう」と言った。

江口はうなずいて、「気に入ってくれてよかったです。雅之があなたを探しているようです」と言った。「そうですか?それなら失礼します」と里香は言って、階段を下りた。しかし、彼女が階段を下りたばかりで雅之を見つける前に、別荘のホール全体の音楽が静かになった。

「何が起こったの?」

「どうしたの?」 みんなが疑問に思っていると、執事が出てきて、真剣な顔で言った。

「皆さん、どうか落ち着いて聞いてください。うちのお嬢様の真珠のイヤリングがなくなりました。それは亡くなった奥様がお嬢様に贈った遺品で、お嬢様はとても大切にしていました。今なくなってしまったので、早急に見つけなければなりません。ご迷惑をおかけして申し訳ありません」

「それはどういう意味ですか?一人一人調べるのですか?」誰かが尋ねた。

執事は言った。「もちろんそんなことはしません。私は先ほど監視カメラを確認しました。お嬢様の部屋に入ったお客様がいましたので、その方々に少しお話を伺いたいと思います」

みんなが顔を見合わせた。しばらくして、何人かの女性が前に出てきた。

「私は行きましたが、江口さんの部屋には入っていません」

「私も江口さんと一緒に出てきました」

「私は友達と一緒に行きましたので、江口さんと少し話をしてから出てきました」

執事は女性たちを見てうなずき、別の方向を見た。

「他には?」

誰も声を出さなかった。

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