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第440話

雅之は車を運転して、直接に二宮家へ戻った。

本当、あきれたと、里香は思った。買い物なんて言っていたが、全部嘘だったんだ。

里香は無表情で車を降り、内部へ向かって歩き出した。

「どこへ行くんだ?」

雅之は彼女の腕を掴んだ。

里香は言った。「もう遅いし、休んだ方がいいわ」

「休むのは後だ」そう言って、雅之は里香を連れて別の方向へ歩き出した。

二宮家の別荘はとても広く、里香がまだ行ったことのない場所が多かった。ある扉の前に来て、雅之が扉を押し開けると、中にはさまざまなコレクションが並んでいた。

里香は少し驚いて言った。「これは?」

雅之は言った。「おばあちゃんに贈るものを一つ選びなさい」

里香は近づき、ガラスケースが中のものを覆っており、灯りがまっすぐその中に射していた。

この部屋には古い骨董品や書画、翡翠や宝石、アクセサリーがずらりと並び、なんでも揃っていた......

全てのアイテムには値札がついていた。

いくつかは購入されたもので、いくつかはオークションで競り落とされたものだった。どれも非常に高価だ。

里香は、その数字の後ろに並ぶゼロを見るだけで、つい感嘆せずにはいられなかった。

お金持ちは恐るべし!

雅之はドアの前に立ったまま言った。「気に入ったものがあれば、僕の口座に直接振り込んでくれればいい」

里香は戸惑いの表情で彼に視線を向けた。「私に売るつもりなの?」

雅之は片眉を上げて言った。「他に何がある?」

里香は思わず唇を引きつらせた。恥ずかしくも、好きなものを選ばせるというのは、てっきりプレゼントかと思ったと言いたいところだった。

口に出さなくてよかった。

どれ一つとして、彼女には買えるものがなかった。

雅之は片手をポケットに入れ、部屋に入り、ざっと見渡した後、最終的に視線を一つの翡翠の簪に落として言った。「これはいいな。おばあちゃんは簪が好きだから」

里香はその簪の値段を一瞥した。なんと、8億円。

なるほど、ちょうど自分の持っている額だ。つまり、雅之は里香の持っているお金を見越してこれを勧めたってこと?

里香は軽く笑って言った。「あなた、さすが商売人ね」

雅之の端正な顔は穏やかで、美しい目は微笑みを浮かべながら、彼女を見つめていた。「お金を出さなくてもいいよ。代わりにちょっと手伝えば」

里香は一瞬何のことか
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