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第211話

孤児院には、親に捨てられた子供たちがたくさんいた。里香は思わず考えてしまった、自分も捨てられたのだろうかと。

自分を産んだ親は、どうしていらなくなったんだろう?

だから、これまで一度も実の両親を探そうなんて思ったことがなかった。

祐介は里香のぼんやりした表情を見て言った。「もしかしたら、君の家族に何か事情があったのかもしれないし、君が誰かに連れ去られた可能性もあるよ。里香、探してみたいと思う?」

里香は「まだ考えがまとまってない」と答えた。

祐介は「じゃあ、ゆっくり考えればいいよ。考えがまとまったら教えてくれ。俺が手伝うから」と言った。

里香は彼を見て、少し感動した。「祐介兄ちゃんはどうしてそんなに私に優しいの?」

祐介は里香がまるで兄を崇拝するような目で見つめてくるのを感じ、胸が締め付けられる思いで、少し詰まりながら「だって、兄さんだからさ、はは」と答えた。

里香も微笑んで「ちゃんと考えてみるね」と言った。

「うん」

祐介はこの話題を続けたくなかった。

この顔、そんなに兄に似てるのか?

祐介は目を細めながら、里香が初めて自分を見た時のことを思い出した。その時の驚いたような目は、今はもうどこにもない。

ちぇっ......

すでに昼になっていた。里香は昼食を作り、祐介もそれを断らず、一緒に食べてから帰っていった。

里香はソファに座り、スマートフォンを取り出してかおるに電話をかけた。

「もしもし?」

かおるの小声が聞こえてきた。

「何か不都合でもあるの?」と里香が聞いた。

「いや、ただ彼に声を聞かれるとまた面倒だから」とかおるは答えた。

里香は、少しかおるが気の毒に思えた。

「カエデビルのマンション、売っちゃったよ」と里香は言った。

かおるは驚いて「そんなに早く?いくらで売れたの?」と尋ねた。

「6億で」と里香が答えると、かおるの声は興奮気味になった。「すごい、すごいじゃん!やったね、里香ちゃん!一気にお金持ちだね!」

里香は「前の家も売ろうと思ってる。それで、冬木を離れるつもりなの」と言った。

「え?冬木を離れるの?」かおるは驚いて、声が少し大きくなった。

すぐにかおるは口を押さえ、寝室の方を振り返った。中から月宮の声が聞こえないのを確認してから、再び小声で尋ねた。「何かあったの?」

里香は「何もないよ。ただ、急に
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