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台風の日、夫は幼なじみのため私を置き去った
台風の日、夫は幼なじみのため私を置き去った
Author: 山本香苗

第1話

台風が襲来し、豪雨が降り注いでいた。

真夜中、岡田洋平は電話を受けると顔色を変えて言った。「待ってろ、今すぐ行く!」

こんな天気の中でも躊躇なく出かけるなんて、田中玉美のためしか思えなかった。

私は彼の手を引いて言った。「行かないで、怖いの!」

妊娠3ヶ月で、流産の兆候があり、医師から自宅で安静にするように言われていたからだ。

洋平は苛立ちながら言った。「玉美が風邪を引いたんだ。少しは分かってくれないか?」

彼は私の手を振り払い、ドアを乱暴に閉めて出て行った。

その急いだ様子に私は呆然とした。

洋平との結婚生活は2年目で、妊娠3ヶ月。玉美の存在を知ったのは、婚約した後だった。

当時彼は、玉美は幼なじみの隣人だと正直に話してくれた。

私は深く考えなかった。幼なじみで結ばれなかったなら、相性が合わなかったのだろうと。

でも間違っていた。玉美から電話が来れば、洋平はどこにいても、何をしていても駆けつける。

以前私が喧嘩をした時、洋平は「小林愛子、どうしてそんなに器が小さいんだ?玉美は一人なんだから、助けるのは当然だろう!

愛しているのは君だけだから、安心してくれ」と言った。

結婚後、玉美は私たちのマンションにまで引っ越してきた。

今や彼女が風邪を引いただけで、妊婦の私を置いて夜中に出かけていく。

私は思わず冷笑を漏らし、首を振った。行きたいなら行けばいい!

私は寝ようとしたが、横になるとすぐに、外の台風の音に恐怖を感じ、時々車のアラームが鳴り響いた。

また大木が根こそぎ倒れたようだ。誰かの車が外に停めてあるなんて無謀だ。

そのとき、リビングで大きな音がして、ガシャンという音に私は驚いた!

おずおずとドアを開けると、周りは真っ暗で停電していた。

風が吹き込み、私は呆れた。窓が吹き飛んでいた!

洋平に補強するように言っておいたはずなのに!

急いで部屋に戻り、洋平に電話をかけたが、誰も出なかった。

外に出る勇気もなく、ただ腕を抱えて隅で震えていた。

やっと夜が明けて、汗を拭うと、腹部に痛みを感じ、トイレに行くと出血していた。しかも、断水していた!

私は驚いた。妊娠3ヶ月はまだ安定期ではない、病院に行かなければ。

急いで洋平に電話をかけると、十数回呼び出し音が鳴った後やっと通じた。

玉美の声が聞こえた。「小林さん?洋平は昨夜私の看病で徹夜したので、今寝ています。何かありましたか?」

「電話を代わってもらえませんか?」

「ああ、洋平はとても疲れているので、急用でなければ起こさない方がいいと思います!」

私の心は沈んだ。洋平、よくもそんな!

外を見て写真を撮り、洋平に送信した。

そして救急車を呼んだ。この状況では油断できない。

幸い救急車はすぐに来てくれたので、私は病院に向かった。

しかし、交差点を一つ過ぎたところで、強風にあおられて車体が不安定になり、路側の花壇に衝突。私はベッドから転がり落ちてしまい腹部に激痛が走った。

「妊婦さんが出血しています!しっかりして!」

私の意識が朦朧とする中、看護師の腕をつかんで、「洋平に電話して!

私の夫です!」

看護師が携帯の「夫」として保存された人、洋平に電話をかけたが、出たのは女性だった。

「小林さん、洋平は寝ていますから、明日にしましょう!」

私が何か言う前に、電話は切られた。

私の心は沈み、涙が止めどなく流れた。

看護師は気まずそうに、急いで慰めてくれた。「あの、しっかりしてください。赤ちゃんはあなたが必要です!」

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