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第4話

役所の入り口で長い間待っていると、ようやく陸川一航が姿を現した。

しかし、彼の隣には温井恵も一緒だった。

陸川一航は唇を厳しく結び、私をじっと見つめる。

その姿を見て、彼が私にプロポーズした日のことを思い出した。あの時も彼はこんなふうに緊張していて、不安げだった。

片膝をつき、ダイヤの指輪を手に、真剣な眼差しで「大江花子、一生君の気難しいところも包み込んで愛する」と誓った彼の熱い瞳が今も心に残っている。その深い愛情に心を打たれ、私は笑顔で手を差し出したのだ。

陸川は慎重にその指輪を私の薬指にはめ、「ピアニストは手を命のように大事にするだろう。俺の手も生涯君のためだけにある」と私の手を握ったのだった。

しかし、今、彼の何も飾っていない薬指、そして温井恵と指を絡ませるその手を見て、あの日の自分がいかに甘かったかを思い知らされた。

温井恵は私の視線を感じ取り、私の前に来て、金箔の施されたミュージカルのチケットを二枚差し出した。「花子姉さん、今夜の舞踏会は愛し合う二人が誤解を解き、破れた鏡が再び繋がる話です。どうか一航兄さんにもう一度チャンスをあげてください。今夜を過ごせば、きっとまた元のように......」

彼女の偽善的な顔に吐き気を覚え、私は彼女の手を払いのけた。「余計なお世話よ!」

温井恵はよろめき、地面に倒れ込んだ。

すると、陸川一航はすぐさま彼女の元へ駆け寄り、抱き起こしながら怒りの目で私を睨みつけた。「花子!いい加減にしろ!温井恵が親切心で来てくれたのに、なんて横暴な態度だ!」

温井恵は急いで彼を引き止め、「いいえ、一航兄さん、花子姉さんを責めないでください。私が勝手に贈り物をしたのがいけなかったんだ......」

「彼女の肩を持つな!」陸川一航は私を睨みつけた。「離婚したいんだろ?だったら息子を引き渡せ。そしたらすぐにでも離婚してやる!」

私は怒りで声を震わせながら言った。「陸川一航、何度言えば気が済むの?あなたはもう息子に会っているわ、あの日、花壇で!あなたが自分で灰にしてしまったのよ!」

「もういい!」陸川一航は苛立ちを隠せず大声で叫んだ。「花子!離婚したくないからって、息子の生死をネタに嘘をつくのはやめろ!」

彼は私を睨みつけ、一言一言を噛みしめるように言った。「最後に聞く、息子は一体どこにいるんだ?」

私は拳を握りしめ、
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