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第9話

魂が抜けそうになった。

彼に背を向けたまま、呼吸さえも止まりそうだった。

彼の足音がこちらに近づいてくるのが聞こえた……

「浩」

突然、彼の母の声が部屋の入り口から聞こえた。

浩は振り返った。

その隙に、私は素早く引き出しを閉めて振り返った。

「何をしているの?」浩の母がやって来て、私を見つけると、すぐに分かったような笑顔を見せた。「杏が来てたのね、こんな早くに。さっきまで外に出てたのよ」

「知ってます」私は歩み寄った。

「ちょうどいいわ。お昼は何を食べたい?お手伝いさんに作らせるから」

「大丈夫」私はすぐに答えた。「さっき父から電話があって、母の体調が悪いらしいので、急いで帰らなきゃいけなくなったの。帰らなきゃ」

「じゃあ、送って行くよ」浩は一瞬戸惑ったように言った。

「結構。もうタクシーを呼んだから」

そう言い終えると、私は急いでその場を後にした。

一気に外に出て、途中からはほとんど走っていた。タクシーに乗った時、ようやく少し緊張が解けた。

携帯を取り出し、撮った写真を見ながら、強く握りしめた。

もしエイズが本当なら、あの病院でのことはすべて嘘だったのか!

私は携帯を取り出し、以前帳簿を手伝っていた時に知り合った社長に電話をかけた。

彼は医療業界に精通していて、医学界の大物とも知り合いだった。

「病院とある人について調べてほしいんです……」

10分後、私は電話を切った。

あと一歩だ。

あいつはもう少しで私にエイズを感染させるところだった。両親が一生懸命稼いだお金まで奪おうとしている、こんな男を絶対に許すわけにはいかない!

家に帰ると、両親に向かってこう言った。「私、浩と婚約するわ」
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