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第5話

三日後、少年が命をかけて人を助けたというニュースに反転が起きた。

奈緒は涙を浮かべながらカメラの前で泣き崩れた。

「私はこれが上野くんの一芝居だと思っていました。彼はお父さんが自分を愛しているかどうかを確かめたかったんです。でもまさか、泳げるはずの上野くんがもがくのをやめてしまうなんて」

「それで、木村さんは?上野さんは木村多也という友達がいると言っていましたよね」

カメラは奈緒の青白い顔を映し出し、彼女はスマホを取り出した。

その動画の中には誰もいない教室で、健が独り言をつぶやいていた。

「息子、彼は父親じゃない。上野くんを一番愛しているのは俺だ」

健は振り返り、椅子に座ると、眼鏡を外してカメラの方を向きながら言った。

「木村くん、ありがとう」
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