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第4話

吉田星奈は困ったように頭を振り、無垢な目でお母さんを見つめた。

「ママ、パパに言って、ほんとに何もないの。ちょっとした遊びでしかないから」

お母さんは娘がこんなに頼むので、結局心を軟らかくしてお父さんに言った。

「もういいわ。紗良は今日晩ごはんを家で食べるって言ってるから、先に帰りましょう」

お父さんは不満そうに吉田星奈を睨みつけ、言った。

「会社で大きな契約が進んでいるんだ。今は一ミリもミスが許されない!」

この言葉は吉田星奈への警告だった。

吉田星奈はもちろんそれを理解し、素直に頷いて甘い声で言った。

「大丈夫、パパ。娘は絶対に邪魔しないから」

お父さんは「ふん」と鼻を鳴らし、背中を向けて歩き去った。

お母さんは夫が怒って歩き去るのを見て、急いで追いかけた。

でも、心配で追いかけることもできず、慌てて吉田星奈の手を取って、細かく注意した。

「星奈、遊びすぎないで、命を奪わないようにして、後でお金をしっかり渡してあげてね」

吉田星奈は素直に頷いた。

私は浴室でその会話を聞いていて、全身に冷や汗が流れるのを感じた。

吉田星奈のような命を軽視するような人間は、どうやら親に甘やかされて育てられたのが原因の一部のようだ。

「お金を渡すって?」

聞き覚えのある男性の声が響いた。

神宮祐哉が帰ってきた!

私は辛うじて浴室の扉の近くに移動した。

神宮祐哉は部屋に入ってきて、周囲の人々を見渡し、吉田星奈に聞いた。

「星奈、別荘に来たとき、ここで女の子を見なかった?」

吉田星奈は無垢なふりをして首を振りながら言った。「見てないよ、お兄さん」

「私が来てから、女の子なんて見かけなかったよ!」

神宮祐哉は目を細めて、後ろにいる彼女の友達を見渡した。

彼女たちも一斉に首を振りながら言った。「神宮様、ここは私たちだけですよ、遊んでいました」

「うん、うん、女の子なんて見なかったよ!」

神宮祐哉は言われて疑念を抱いた。まさか紗良が今日外出したのか?

お母さんは神宮祐哉の腕を取って言った。

「祐哉、私たち先に帰ろう。あなたが紗良の好みをよく知っているから、おばさんが彼女に好きなものを作ってあげるように、家政婦に頼んで」

吉田星奈は「紗良」という名前を二度聞いた。

思わず疑問を口にした。

「ママ、この紗良って誰?」

お母さんは笑い
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