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第002話

翌日、松本咲夜がドアを開け、「お父......」と言いかけて、その場で固まった。

柔らかなベッドの上で、小柄な私が全裸で男性の腕の中で甘い寝息を立てていた。咲夜は怒り狂い、飛びかかってきて私の腕を掴み、ベッドから引きずり出そうとした。

「この下等人!やっぱり誰とでも寝る淫売よ!男なら誰でも誘惑して、今度は父の寝床まで這い上がるなんて。

死んじゃえ!死んじゃえ!」

私は抵抗せず、ただ無邪気な目で彼女を見つめ、すぐに視線を逸らして目を固く閉じた。

震える肩だけが、私の恐怖を物語っていた。

「もういいだろう、咲夜。おとなしくしろ」

松本嵐真は満足げな雄獅子のように、頭を片手で支えながら、だらしなく私たちを見ていた。

「お父様、この女があなたを誘惑したのよ!」

咲夜は手を止めたが、不満げに甘えた口調で文句を言った。

松本嵐真は、うつむいて静かに涙を流す私を一瞥し、咲夜をなだめた。「ただの女だ。お前の母さんが亡くなって、俺にも欲求はある」

「でも......でも......」

「もういい。お前はもう大人なんだ。子供じみたことはやめろ。出ていけ」

咲夜は私を恨めしそうに睨みつけ、しぶしぶ私から手を放した。

「お父様、何年も彼女を作ることに文句は言わなかったわ。でも、どうしてこんな女を泊めるの?彼女にお父様のベッドで寝る資格なんてないわ」

咲夜は言えば言うほど腹が立ち、最後には責めるような口調になっていた。彼女自身、そのことに気づいていなかったが。

松本嵐真の表情が一瞬で曇った。「出て行け」

......

朝食の時、私を抱きかかえて降りてきたのは松本嵐真だった。

咲夜はその光景を目にして、目を剥いた。

私は内心で笑った。もちろん、わざとやったのだ。

先ほど咲夜が出て行った後、私はずっと床に伏せていた。嵐真に聞かれるまで。

それから恥ずかしそうに、昨夜彼が激しすぎて足に力が入らないと言った。

嵐真はその言葉を聞いて、ご機嫌になった。

自分の女から最高の評価を得て喜ばない男はいない。

機嫌が良くなった彼は、自然と私を抱いて階下まで運んでくれた。

咲夜は食事が喉を通らない様子で、突然切り出した。「お母さんがまだ生きていたらよかったのに」

その言葉で、周囲の空気が一気に重くなった。

咲夜は挑発的に私を見つめ、嵐真に幼い頃の思い出を語り始め、最後にこう言った。

「お父様、ここ数年彼女を作ることを止めなかったのは、お母様に二度と再婚しないと約束したって知ってたからよ」

私を指差して言った。「でも、この河野さんって女、本当に嫌いなの。付き合うのやめてくれない?」

嵐真は長い沈黙の後、わずかに頷いた。

咲夜は瞬時に眉間のしわを消し、嬉しそうに嵐真を抱きしめてキスをした。「やっぱり、パパは私が一番大好きなんだ!」

そして、高慢な態度で腰に手を当て、私の鼻先を指差して罵った。「あんた、出ていきなさい!」

私は潤んだ目で松本嵐真を見つめ、今にも落ちそうな涙を堪えながら、最後まで彼に助けを求めることはしなかった。

「もういい。朝食を済ませてから行かせろ」

再び沈黙が続いた。

「そういえば野良猫ちゃん、名前を聞いていなかったな」

「水見です」言い終わると、私は再び俯いた。「お腹いっぱいです」

彼は私の前にほとんど手をつけていないパンを見て、眉をひそめた。

それでも運転手に私を送るよう指示した。

その後の日々は辛かった。咲夜の私への嫌がらせは更に露骨になり、人目も憚らなくなった。

「お父様に取り入ったからって、偉くなったつもり?

あんたみたいな貧乏臭い人間は、骨の髄まで貧乏臭いのよ。私の上には立てっこないわ」

そう?

私は口元を歪め、そっとお腹に手を当てた。

咲夜は知らない。私の家系の女性は生まれつき特殊な体質で、妊娠しやすく、妊娠中も出産時も何の不快感もない。

母は10人産み、そのうち8人が男の子。叔母は8人全員男の子を産んだ。

あの夜が終わった時、私はすでに新しい命が宿ったことを感じていた。

いわゆる東京のお嬢様も、松本嵐真に他の跡取りがいないからこそ威張れるだけ。

でも今や、私にはいるのだ。

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