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第003話

この間、咲夜を避けようと気をつけていたが、結局捕まってしまった。

彼女の取り巻きに平手打ちを食らい、頬が腫れ上がった。

でも薬は塗らなかった。

ある視線が密かに私を見守っているのを知っていたから。

松本嵐真が私を手放せないことは、よくわかっていた。

成人してから知ったのだが、我が家の女性は妊娠しやすいだけでなく、生まれつき男性を魅了する体質なのだ。

あの夜の悦びに、嵐真は夢中になった。

私を抱いた後、彼はもう二度と私ほど相性が良く、天にも昇る快感を与えてくれる女性に出会えないだろう。

だから彼が私を盗み見に来るのは、想定内だった。

30日目、松本嵐真の我慢の限界がそろそろだと見込んだ。

下校時間近く、松本咲夜の前に立ち、挑発的に言った。「私をそこまで敵視するのは、お父様と結婚するのを恐れてるからでしょ?」

咲夜は私のこの自殺行為とも言える行動を軽蔑的に見下した。「あんた、自分が何様だと思ってるの?よくもうちのパパと結婚なんて考えられるわね」

「私に出来るかどうか、すぐにわかるわよ」

ここ最近、咲夜を避け続けていた私が突然態度を変え、大勢の前で彼女に挑むなんて。

案の定、彼女は激怒した。

すぐに取り巻きが私を取り囲み、突き飛ばし、罵倒し始めた。

あの見慣れた人影を見つけると、咲夜に向かって口パクで「バカ」と言った。

彼女を怒らせるのに、策略なんて必要なかった。

予想通り、彼女は猛り狂って突進してきた。

松本嵐真が近づいてきた時、私は目を伏せ、哀願するような声で言った。「ごめんなさい、松本さん。お願い、もう許して!」

「何が悪かったのかわからないけど、謝ります!」

しかし咲夜は私を許すどころか、強く押し倒した。

そして私の上に乗り、バシバシと平手打ちをした。

「お腹が......お腹が痛い......」

「血が出てる!」誰かが悲鳴を上げた。

次の瞬間、体が宙に浮いた。松本嵐真に抱き上げられたのだ。

絶望的だった私の目が輝き、彼を見つめた。「赤ちゃん、私たちの赤ちゃん!」

この言葉で、周囲の空気が凍りついた。

嵐真は私を伸びたリムジンに乗せ、途中何の支障もなく病院に着いた。

検査の結果、お腹の子供は無事だった。

もちろん大丈夫。母だって出産直前にベッドから転げ落ちても平気だった女だもの。

呆然とする嵐真にしがみつき、まるで英雄を抱きしめるかのように言った。「よかった、あなたが来てくれて」

「私たちの子供が助かったわ。そうでなければ、どうすればよかったか......」

そう言いながら、彼の胸に顔を埋めて静かにすすり泣いた。

松本嵐真は、数十億の資産を継承する冷酷な経営者として、内心では多くの子孫を望んでいた。

しかし、咲夜という一人娘を産んだ後、どれだけ努力しても、何人の女性と関係を持っても、もう一人の子供さえ授からなかった。

彼が諦めかけていた時、私が思いがけない喜びを与えたのだ。

松本咲夜が遅れてやってきたが、ボディーガードに入り口で止められた。

彼女は恨めしそうに私のお腹を睨みつけ、歯ぎしりした。

父親になる喜びに浸っていた嵐真は、咲夜の目に一瞬よぎった悪意に気付かなかった。

「水見、君は俺の幸運の猫だ。俺の小さな幸運の星だ。

家に帰ろう。俺たちの息子に最高のものを与えたい!」

私が答える前に、咲夜は我慢できなくなり、ボディーガードを押しのけて突進してきた。

「お父様、こんな下等な女は私の靴を磨く資格もないわ。どうして一緒に住むなんて!

もしこの女を家に連れて帰るなら、私はもう帰らないわ」

そう言いながら、挑発的な目で私を見た。

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