共有

第8話

私は周りの話を聞きながらも、心の中には何も感じていなかった。

大翔を家の玄関まで連れて行くと、ドアが少し開いていて、中から喧嘩の声が聞こえてきた。

本来なら大翔を置いてさっさと立ち去るつもりだったが、親友の好奇心が燃え上がり、彼女が私を引き止めて「ちょっと覗いていこう」とウズウズしていた。

「なんでさ!母さんがいた時は良かったじゃないか!今じゃ何もかもだまし取られて、すっからかんだよ!恥ずかしくないのか?なんでこんな父親がいるんだろう!」

「俺にどうしろって言うんだよ。お前だって気づかなかったんだろ?それにお前の母さんが出て行ったのは俺のせいじゃないし、お前だって助けてくれなかっただろ?俺も歳だし、もうお前たちが面倒見ろよ」

口論は激しさを増していた。

親友は髪を触りながら、悠然と家の中へと足を踏み入れた。

「おやおや、喧嘩の最中?悪い時に来ちゃったかしら?あら、これは結婚したばかりの茂さん、ねぇ、聞いたわよ。すっからかんになっちゃったって?」

彼女の声で一同がこちらを見た。

家の中は私が出て行ったときとはまるで別物で、ゴミだらけ、まるで荒らされた後のようだった。

嫁はやつれた顔で座っており、息子も見る影もなく疲れ果てていた。

私と親友は、二ヶ月前に買ったばかりのドレスにハイヒールで、なんとも言えない場違い感が漂っていた。

私たちが煌びやかに現れると、息子が慌てて飛びついてきた。

「母さん、助けてくれ、本当にもう無理なんだよ。父さんが金を全部あの女にだまし取られたんだ。僕も妻も仕事が催促の連中に邪魔されて、もうどうしようもないんだ。母さんなら何か策があるだろう?」

息子は疲れ果てた様子で、地面にひざまずいて私に助けを求めてきたが、私の心は石のように冷たく固まっていた。

無表情で彼を見下ろし、一歩後ろへ下がりながら答えた。

「何の策もないよ。離婚の時に貰ったのはたったの20万円だし、今はそれもほとんど使い果たした」

心の中では、「たとえ持っていても、絶対に使わせない」と思っていたが、言葉には出さなかった。

親友も嫌そうに二歩後ろに下がり、彼らの惨めな様子を楽しんでいるかのようだった。

「まあね、当時もう少し彼女に分けていたら、だまし取られる額も少しは減ったんじゃない?
ロックされたチャプター
この本をアプリで読み続ける

関連チャプター

最新チャプター

DMCA.com Protection Status