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第73話

あるお婆さんが優奈に男を紹介し、相手のLINEを追加するように勧めていた。優奈は熱心な勧めに抗えず、携帯を取り出してQRコードをスキャンしようとしていた。心の中では、追加した後に事情を説明しようと考えていた。

ところが、突然、頭上から伸びた長い手が彼女の携帯を奪い去った。

驚いて振り返ると、成瀬だった。優奈は思わず眉をひそめた。

「携帯を返して」

成瀬は冷ややかに彼女を見つめ、携帯をそのままポケットにしまい込んだ。

「君が持っていると危ない。俺が預かっておく」

その場にいた成瀬と優奈が結婚していることを知らない他のお婆さんたちは、困惑した顔で美代子を見ながら言った。「美代子、これはどういうこと?」

美代子が説明しようとしたが、成瀬が淡々と口を開いた。「皆さん、すみません。優奈はすでに結婚しています。私が彼女の夫です。さっき、私のお婆さんが彼女に男を紹介しようとしていたのは、私をからかうためです。気にしないでください」

成瀬のこの言葉は、穏やかな海に深水爆弾を投げ込むようなもので、瞬く間に全員の視線が美代子に集中した。

「美代子、本当なの?!なんで今まで話してくれなかったの?まったく隠すのが上手すぎるわ!」

「信じられない!今まで成瀬が最後に結婚すると思ってたのに、まさか私たちの孫の中で一番早く結婚していたなんて!」

「美代子、それはひどいわよ。自分の孫嫁なのに、義理の孫娘だって騙してたのね!ダメよ、これじゃ許せないわ。私たちに食事を奢ってもらわないと、簡単には終わらせないわよ!」

......

皆が美代子に注意を向けている隙に、成瀬は優奈をその場から連れ出した。

二人がバーベキューエリアを離れ、静かな林の中にたどり着くと、成瀬は優奈の手をようやく離した。

「お前、バカなのか?!さっきお婆さんが男を紹介しようとしていたのに、なぜ断らなかったんだ?!」

優奈は冷静な顔で彼を見つめ、「どうして断る必要があるの?」と答えた。

成瀬は顔を真っ青にし、歯を食いしばって彼女を見つめながら言った。「優奈、俺たちまだ離婚してないのを忘れたのか?!」

優奈は頷いた。「もちろん覚えてるわ。でも、今はただ知り合おうとしていただけで、何かしようとしていたわけじゃない」

「お前......!」

成瀬の目が怒りに燃えているのを見た優奈は、手を差し出して「携
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