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第10話

藤井杏は待ちきれずに電源ボタンを押した。数秒の起動アニメーションのあと、顔認識ロック解除の画面が表示された。

「内部はなくなっていないか」

オーナーは頭を振って、「私は何も触らなかったが、具体的にはロック解除後に調べなければならない」

藤井杏は考えたあと、頷いた。

「まあ、今のところそうしよう。ロック解除の方法を見つけたらまた来る」

藤井杏は画面に設置された自分とほぼ同じ顔の横顔を見つめて、目に狂気の光を浮かべた。

「あなたたちの間に起こった全てのことを知り出し、絶対あなたの身分を奪いたい」

どうして愛はいつも人を変化させるのだろうか?

もしそうならば、人間は一体いつになったら愛から離れて進化するのだろうか。

私はため息をつき、頭を振って去ろうとしていた。

振り返ると、陰影に立っている最上言弥を見つけた。

最上言弥は立ち尽くして、眼差しには少し戸惑っていた。

「いや、あの晶じゃない!あなたはあの晶じゃないわ」

藤井杏は声お聞いて振り返ると、驚きから恐れ、最後に絶望に変わった。

最上言弥は突然瞳を暗くして、以前の澄み切った眼差しに戻った。

「あなたはすべてふりをしているの?私がここに来て携帯を取りに行かせるためのか」藤井杏は大声で叫んだ。

最上言弥は答えず、眼差しは暗くてはっきりしない。

「なぜ晶と連絡をとるための携帯を盗んだの」

「あなたは故意に私が晶と連絡をとれないようにして、最上家に忍び込み、晶を連れ去ったのではないか」

「彼女を嫉妬し、彼女の代わりになりたがって、だから晶を隠したのではないか」

最上言弥は苦笑いを浮かべて、突然跪いた。

「藤井杏、お願いだ。私は最上家の全部をあげよう、何も欲しくない。私の晶を返してくれないか」

藤井杏は一瞬驚いたが、その後自嘲的に笑いはじめた。

笑いながら涙を流し、苦笑いから大笑いに変わった。

「最上言弥、十年愛してきたのに、分からないの。私は何も欲しくない、あなただけを愛してほしい」

「私の晶を返して」

「私の晶をどこに連れ去ったの」

最上言弥も狂気になって、藤井杏の腕を掴んで外に連れ出た。

「言って!晶はどこにいるの。私を連れて行こう」

藤井杏は安全柵の外の広がる海を見て、指一本を伸ばした。

「あなたの晶は、もう死んでいるよ。あなたに殺されたよ。あなたに海に捨てられ
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