第4話

言弥が私に買ってくれた服は全部、世界中一着しかないの数量限定のもので、私のレプリカを作るためには、人に頼んでその服のレプリカを入手するしかなかったのだ。

痛いよ。私は、どうしてまだ死なないのだ？

お父さん、お母さん、どうしてまだ私を迎えにこないのだ？

突然、業をにやした声が聞こえてきた。

言弥の口振りは不快そのものだった。

「ここでなにをしている？」

藤井杏は反射的に、悲鳴をあげてすぐ、私を離した。

空中に引っ提げられていた私の体は、早いスピードで落ちた。変な姿勢で地に転がり込んだ私の手足には、体の重量をかけられ、パチリという音がしてきた。

これで、骨は全部折れたでしょう。

なあ、最上言弥、今の私はよりお人形に似てきたでしょう。

見たでしょう？これで満足か。

私は急に言弥の表情がどうなっているのかを見てみてたくなったが、残念だったことに、私は見えなかったのだ。

藤井杏のパシリたちは、早い動きで私を汚いゴミ袋で包んだ。

私はもがきもせずに、大人しく中に臥していた。

藤井杏の声には、なんとなんく緊張があった。

「言弥くん、一応電話をかけてみたんだが、言弥くんが出てくれなくて。それで勝手なことをして、別荘で言弥くんを待つことにしたが......」

「僕の許可なしに、最上家の屋敷に踏み入れることがタブーだっていうことを知らないか」

言弥の声には絶対的な威厳があって、私は藤井杏が恐怖で、床に座り込んだのをはっきりと感じた。

あ、つまらないな。このくだらない茶番を早送りして、もっと早く言弥に私の死を無届けさせたいものだ。

本来であれば、自由にこの人生を過ごせる私が、彼に苛まれてどんなふうになったか見せてやりたいのだ。

もう待ちくたびれたのだ。

私の意識が段々と朦朧になっていき、私は自分の命が流れて行くのを感じた。

頭の中には、走馬灯のように言弥との全てが勝手に流れていた。

初めてあったのは、私は喘息の発作を引き起こした彼を水から救い出した時だった。その時の彼も、こうして私の手を強く掴んでいて、名と住所を教えるまで離せてくれなかった。

あの時から、言弥はすでにキチガイだった。

ましてや、大人になってから、私は彼の一番の執念となった。

「晶、僕の命も晶のものだよ。晶が望めば、いつでも僕の命を捧げる」

「晶、そばにいてくれる限り、なんでも約束でこる。たとえ、それが僕に死んでくれということでも」

「晶、もうバカなことをやめて。晶にはもう帰れるお家などないのよ。どこまで逃げるつもりだい？」

「晶、これは全部晶が僕にさせたことだ。今日から、一歩も晶をこの別荘から出させないから」

「晶、またこんなことをしたら、僕は晶と共心中するから。たとえ、冥府に行ったとしても、僕らは夫婦なんだから、僕の側を離れことは決して許さない」

「晶......」

「来い、この女を海に投げ捨てて。なるべく彼女を怖がらせないように、丁寧に」

馴染みのある声に記憶が混じり合った。言弥の声だった。

話の最後、彼の声は明らかに、優しくなってきた。少しばかり、笑いも込めていた。

ふっと何かを思い出したようで、小声で側のものに言い聞かせた。

「そうだ、彼女が起きたかどうか、様子を見に行ってきてくれ。起きているのなら、下へ連れてきなさい。彼女のお気いりのケーキを買ったんだ」

言弥の前の言葉を聞いて、「彼女」という言葉を自分を指す言葉だと勘違いして、ホッとした。

「言弥くん、わざとあたしを怖がらせようとしたでしょう。分かってるわよ。あたしを見せてるなんてしないのよね」

「そうだわ、言弥くん、誕生日プレゼントを一つ用意したのよ」

きれそうになった言弥が舌打ちをしたが、藤井杏は全然それに気付けなかった。彼女は自然な動作で、私に蹴りを入れて、得意げに私の髪を引っ張りながら、言弥の足元に投げた。

「最上邸に侵入したくせもののゴミを捕まえてあげたのよ！言弥くん、見てみるか」

言弥は少しも、藤井杏のことを気に留めていなかったから、ただ淡々と返事した。

「ゴミだったら、捨てるべき場所に捨ておけ」

藤井杏は鼻で笑った。

「言弥くんのいう通りだ！このくせものは、あたしと同じ顔立ちに整形したのよ。海賊版の服であたしのコーデを真似しようとした！」

「ほー？」

言弥の声には、幾分の得意があった。

「そのものたちがいくら真似をしても、お前には敵わないのだ。お前こそがこの僕の自信作だ......まさしく、瓜二つだ」

足音がした後、言弥が私の前まで来ていたのを感じた。革靴でなんとなくビニール袋の口のところを引っ掻き、最上家の屋敷に侵入するほどのくせものは一体何者かをチェックしてみたいようだった。

ゴミに混ぜた血肉の臭いがあまりにも刺激的だったかもしれないが、言弥は身動きを留めて、鼻を庇って後ろへ後退した。

「気色悪いから、さっさと捨てちゃえ」