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第4話

私は本当に結婚した。私を火の中から救い出してくれたもうひとりの消防士と。

彼は命を救ってくれただけでなく、もう一度生きる勇気を与えてくれた人だった。

火傷治療の専門科で目を覚ましたとき、必死に守った顔以外、体のどこにも無傷の場所などなかった。

さらに右脚を丸ごと失い、麻酔が切れた後は体全体の焼けつくような痛みと、失った脚の幻肢痛で何度も崩れそうになった。窓に上って身を投げようとしたことも何度かあったが、そのたびに彼が私を引き戻してくれたのだ。

彼は苦しみの底にいた私にずっと寄り添い、義足をつけ、リハビリを続ける間も励ましてくれ、ついには普通の人に見えるまでにしてくれた。

私は微笑んで湊の胸にもたれ、慎重に娘を抱き上げた。その瞬間、張りつめていた心がようやく解けていくのを感じた。

ふっくらとした小さな手で私の首に抱きつく娘は、私の頬に「ちゅっ」とキスをして、「ママ、私もパパもママに会いたかったよ」と言った。

私は娘の頬をそっとつまみ、胸が温かさでいっぱいになった。「さあ、帰りましょう」

「行かせない!」

空が両手を広げ、私たちの前に立ちはだかった。彼は険しい表情で娘を睨みつけ、指をさして叫んだ。

「それは僕のママなんだ!そこから出ていけ!

僕だけが彼女の子供なんだよ。すぐに僕と一緒に家に帰るはずなんだ!」

娘は口を尖らせ、空を睨み返した。

「とっくにあなたのことなんていらないの。今は私のママだもん」

空は顔を真っ赤にして、反論するように言った。

「嘘つくな!僕のママが僕をいらないなんてありえない。ママはただ間違いを犯したから、僕とパパから離れていただけだ!

今は僕とパパがママを許したんだから、一緒に家に帰るべきなんだ!」

空の頑なな様子に、私は怒りのあまり笑みがこぼれた。そして、湊の手をしっかり握りしめた。

「今日は少し疲れたから、もうあの人たちとこれ以上話す気はないわ。さあ、行きましょう」

湊は優しく娘を抱き上げ、「さあ、帰ろう」と言った。

「桜井、お前がここまで陰険で狡猾な人間だったとはな」

颯斗が突然湊に向かって突進し、湊が娘を抱いている隙を狙って、鼻に強烈なパンチをお見舞いした。湊の鼻から瞬く間に鼻血が溢れ出した。

私は慌ててバッグからティッシュを取り出し、湊の鼻血をそっと拭き取りながら、怒りを込めて颯斗を睨みつけた
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