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第146話

拓海は彼女が去っていく後ろ姿を見つめた。その目は深い。

裕太は唾を飲み込んで言った。「社長、この書類はどうしましょう?」

男は細い目で一瞥し、淡々とした口調で言った。「彼女があなたにくれたものだ。自分で処理しろ」

裕太は「......」

彼は紗希が投げ渡した財産譲渡書を持ち、非常に厄介で、どうしたらいいか分からず困った。

今日の仕事は本当に大変だな。

紗希は家に帰ってから、今日病院で拓海が新しい医者を探しているのを聞いたことを思い出し、渡辺おばあさんの手術のことが少し心配になった。

さっき彼女は手術のことを聞くのを忘れて、病院を出た。

彼女は前に北がおばあさんの手術ができる医者を知っていると言っていたような気がして、北に推薦できる医者がいないか聞いてみてもいいかもしれないと思った。

渡辺おばあさんの体調が心配なので、無事に手術を終えて健康になってほしいと思っていた。

紗希は北に電話をかけた。「北兄さん、今忙しい?」

「大丈夫だよ、ちょうど終わったところ。何かあった?」

「北兄さん、前回、私の友人の祖母の手術に適任の医者を紹介できるかと聞いた時、適任の医者がいるって言ってたでしょ?」

「ああ、でもお前の友人はもう医者を見つけたって言ったんだろ?」

紗希は少し間を置いて「そうなんだけど、その医者が来てくれないみたいで、新しい医者を探さないといけなくなったの」と言った。

「そうか。問題ないよ。俺が帰ったら詳しい状況を話してくれ」

「うん」

紗希は電話を切ると、少しほっとした。

北兄さんが見つけた医者が手術をしてくれることを願った。

夜、紗希は北が帰ってくるのをずっと待っていて、特別に北兄さんのために夜食のラーメンを作った。

北は家に入るとそのラーメンを見て、目を細めて笑った。

彼はわざわざ写真を撮って、LINEの家庭グループに送って自慢した。これは妹が手作りした夜食だ。

北は手を洗って座り、「紗希、まず友人の祖母の体調を話してくれる?」と聞いた。

彼は手術を引き受ける前に、状況を確認しないといけないからね。

紗希は渡辺おばあさんの状況を詳しく説明した。以前、彼女は渡辺おばあさんの介護師だったので、病状をよく知っていた。

北は食べながら話を聞いて、最後に少し真剣な表情になった。「この手術は難しいね」

「そうなの。だからずっ
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