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第151話

おかしいな。彼は、いつ拓海のおばあさんの手術をすると約束したんだ?

彼はそんな約束、一度もしてないぞ!

彼は顎をさすりながら、目に冷たい光を宿した。そうなると、可能性は一つしかない。「詩織が嘘をついた!」

詩織が最近ずっと彼を探してたのはきっとこのせいだった。

こんなことで嘘をついたなんて。北は詩織への印象がかなり悪くなった。

北はテーブルを軽くたたいた。「紗希、以前お前は渡辺家で介護の仕事をしていたけど、渡辺家の連中はお前にあまり良くなかったようだった。それに直樹は、玲奈がお前をいじめてたと言っていた。それなのに、なんで渡辺家を助けようとするんだ?」

紗希が渡辺家で働いてて、しかも嫌な思いをしてたということは、彼らが渡辺家に不満を持つには十分な理由になった。

紗希は目をそらしがちに答えた。「前も言ったでしょ。渡辺おばあさんはずっと私に優しくしてくれて、伯父が事故に遭った時も、渡辺おばあさんが大きな助けになってくれたの。その恩を返したいと思って......」

「そうか」

北は考えて、それなら渡辺家の人間全てが悪いとはいえないようだ。

最後に彼は頷いた。「分かった。お前のお願いを引き受けよう」

彼は拓海が嫌いで、渡辺家の人間も好きになれず、渡辺家の人に手術をするはずはなかった。彼は原則を持つ男だ。

しかし、紗希が頼んでくるなら話は別だ。

原則って何だ?妹のように大切なものか?

明らかにそんなことはない!

「ありがとう、北兄さん」

北が承諾したのを聞いて、紗希はようやくほっとした。本当に渡辺おばあさんに長生きしてほしかった。

北は笑みを浮かべた。「たいしたことはないよ。これは僕が行うべき当然の事だ」

昔、紗希を見つけられなかった頃、彼女が困ってどうしようもない時に、渡辺家のおばあさんが手を差し伸べてくれたんだ。この恩は認めざるを得ない。

だから、この手術を引き受けることにした。

「じゃあ、北兄さんは仕事に戻って」

「うん、明日一緒に渡辺おばあさんの入院してる病院に行って、カルテを見てくるよ」

「いいよ」

紗希は病院を出ると、携帯を取り出して拓海にメッセージを送ろうとしたが、最後に躊躇して携帯をしまった。また明日、北が病院に行って状況を確認した後に話そう。

紗希が去った後、北は携帯を取り出して、LINEで家庭グループにメッセ
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