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第150話

紗希は詩織が病院を出て行くのを見ていたが、詩織が病院に来た理由はわからなかった。

しばらくすると、北がエレベーターから出てきて、紗希に近づいてきた。「紗希、医者に聞いてみたんだけど、お前は精神的なプレッシャーが大きすぎてお腹が痛むようになったのかもしれない」

紗希は頷いた。「うん、医者から聞いたよ」

「紗希、お前はどこからこんなに大きなストレスをもってきたんだ?僕に話してみろ」

北は彼女の隣に座った。「紗希、お前はまだ何かを隠してるのか?」

彼らは紗希を見つけたのに、彼女との間にはまだ距離があるように感じていた。

紗希は目を伏せ、渡辺おばあさんのことを思い出して言った。「別に大したことじゃないよ。友人の祖母の手術の事を心配しているだけ」

「そうだったのか。もっと早く言ってくれればよかったのに。さっき僕の友人に電話して聞いてみたら、お前の友人の祖母の手術をしてくれると言った」

「本当?」

紗希の目が輝いた。北がそう言うなら、問題がないと感じた。

それはよかった。

「紗希、でも僕の友人は忙しいから、僕がお前と一緒に病院に行って患者を見て、ついでに病歴も確認して、状況を把握しておくよ。そうすれば、手術もスムーズに進められるし」

紗希は一瞬躊躇した。北が自分と一緒に渡辺おばあさんを見舞うつもりなのか?

そうなると、隠せないんじゃないか?

彼女は顔を上げて言った。「北兄さん、あなたの友人が直接来れないの?つまり、手術はとても大事な事なんだから、直接見た方がいいんじゃない?」

北は表情が少し不自然だった。直接行ったら、身分がバレてしまうんじゃないか?

前に病院で、正体がバレそうになった。

獣医から病院の医者になったのに、幸い妹は純粋で優しくて可愛いから、疑われずに済んだ。

でも妹だってバカじゃない。

この件は難しい。

しばらくの間、二人とも沈黙に陥った。

北は頭を急速に回転し始めた。どうすれば正体を隠しつつ、紗希の友人の祖母の手術もできるだろうか?

難しすぎる!

結局、紗希が先に我慢できなくなった。「北兄さん、正直に言うけど、私の友人の祖母は拓海のおばあさんなのよ」

北は手が止まり、眉をひそめて言った。「拓海の祖母?」

紗希は頷いた。「うん、渡辺おばあさん」

北は思わず息を呑んだ。渡辺おばあさんって呼び方、随分親しそうじゃない
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