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第149話

詩織は哀れそうに北を見つめた。自分が小林家の千金の代わりであることを知っていたのに。

これらの年、彼女はずっとお嬢様として生活をしていた。

平野兄さんはもう彼女と拓海のことを承諾したのだから、北兄さんもきっと手術を引き受けてくれるはずだ。

次の瞬間、北は冷たい表情で言った。「だめだ!」

彼は紗希が渡辺家で介護をしていたこと、それに拓海の紗希への思いを思い出し、絶対に渡辺家と小林家を関わらせるわけにはいかないと思った。

詩織は顔色が変わった。「どうして?平野兄さんがもう承諾したのに」

「平野兄さんが承諾したのは平野兄さんの勝手だ。そんなに拓海と結婚したいなら、お前の好きにしろ。でも俺は一度も渡辺家の人の手術をすると約束したことはない!」

「北兄さん、平野兄さんの言うことも聞かないの?」

詩織は北が同意しないとは思わなかった。

北は冷淡な表情で言った。「さっき言った通りだ。お前は誰と結婚してもいいが、俺はこの手術を引き受けない」

「北兄さん、この手術を引き受けてくれなければ、私はどうやって拓海と結婚するの?」

「お前は拓海との仲がいいと言ってたじゃないか?俺がこの手術をしないと、彼はお前と結婚してくれないのか?」

詩織はパニックになり、北の手を強く握った。「北兄さん、そうじゃないの。でもどうして渡辺おばあさんの手術をしてくれないの?私たちは家族でしょう。当時あなたたちが私を引き取った時、実の妹のように大切にすると言ったじゃない。私は今まであなたたちに何も頼んだことがないわ。この手術はとても簡単なのに、北兄さんはこの手術さえしてくれないの?」

北は手を引き抜き、失望の色を浮かべた。「この事は交渉の余地はない」

彼は絶対に渡辺家の人の手術をするつもりはなかった。

北は診察室を出て、詩織を置いて安全通路に行って電話をかけた。「平野兄さん、詩織と拓海の結婚を承諾したのか?」

平野は会議中だったが、中断して答えた。「そうだ、私はかつて彼女に約束をした、彼女がおばあさんをよく甘やかせれば、将来彼女に何かあったら、私は手伝うと。昨日詩織は拓海に嫁ぎたいと言った、彼女が固く嫁ぐことを望むから、私は承諾した」

「平野兄さん、拓海はいい男じゃない。拓海が詩織との結婚を承諾したのは、俺に渡辺家のおばあさんの手術をさせるためだ。詩織は俺たちの実の妹じゃないけど
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