第148話

詩織はその質問に言葉を失った。今日ここに来たのは、このことを北兄さんに話したかったからだ。

詩織はもちろん認めるわけがなく、顎を上げて言った。「誰が北兄さんが渡辺おばあさんの手術をしないって言ったの？前は前、今は今よ。北兄さんはもう承諾するわ」

紗希は目の前の女をじっと見つめた。「詩織、拓海が渡辺おばあさんを大切にしてるのは知ってるでしょ。拓海が、あなたが嘘をついて、おばあさんの体を利用して人を騙したってことを知ったら、あなたにとっていい結果にはならないよ」

「ふん、紗希はまず自分のことを心配したほうがいい。渡辺おばあさんの手術はすぐに行われるし、私と拓海の婚約も順調に進むわ」

紗希は詩織がエレベーターに乗り込むのを見送った後、空いていた席に座り、バッグの中の妊娠検査書を見て、心の中のネガティブな感情を振り払った。

今は彼女は詩織の話が本当であることを望んでいる、渡辺おばあさんの手術が順調に行われることを。

でも詩織はあんなに自慢したがる女なのに、もし本当に詩織の兄さんが手術を承諾したなら、なぜ今まで顔を見せずにずっと遅延してきたのか、それに拓海も他の医者に連絡を取っていた。

明らかに拓海も詩織が嘘をついているんじゃないかと疑った。

彼女は今回も二段構えで、北兄さんに適切な手術ができる医者を探してもらわなければならない。

一方、詩織はエレベーターで上がり、直接北の診察室に向かったが、誰もいなかった。

そのとき、北が病室から戻ってきて、診察室の外に立っていた詩織を見て、顔色を変えた。「どうしてここに来た？」

「北兄さん、いい知らせがあるの。平野兄さんはもう私と拓海の結婚を承諾したわ」

北は足を止め、眉をひそめた。「詩織、お前は小林家の子じゃないが、子供の時から小林家で育ち、私たちは決してあなたに苦労をさせなかった。私はあなたが良い男を見つけられることを望んでいる、でも渡辺家のその離婚男のどこが良いんだ？どうしても彼と結婚したいのか？」

「北兄さん、彼はおばあさんの決まりで女の人と結婚させられたから、その女性を愛してなかったの。それに彼はもうあの女の人と離婚した」

「あの女の人は渡辺家に入って喜びを祈るために嫁ぎ、その後拓海は無事に目を覚まして、直接あの女の子を追い出した、これは話に合わない！これは彼の人柄に問題がある！」

詩織は急いで説明