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第49話

 桃は肩をすくめて言った。「もちろん、証拠を残すには最も直接的で強力な方法が必要でしょ?」

 雅彦は海にそれを受け取るように指示し、パソコンで動画を再生した。

 桃の撮った動画は完璧で、事件の一部始終を明確に記録しており、正成と麗子の醜態も完全に収められていた。

 前はあの一家の小細工にはあまり気に留めていなかったが、先日の一見事故に見える交通事故と毒殺未遂事件は、彼の我慢の限界を超えていた。

 「これらの証拠をしっかり集めておけ。何度も挑発してくるなら、そろそろ彼らに代償を払わせる時だ」

 海は、雅彦がついに本気になると聞き、興奮して既に集められた証拠を整理しに急いで出て行った。

 広いオフィスには、再び桃と雅彦の二人だけが残った。

 雅彦は桃を一瞥すると、彼女の白い顔にいつの間にかはっきりとしたクマができているのに気づいた。どうやらこの件のためにかなりの心血を注いだようだ。

 桃に対する印象が、知らず知らずのうちに変わり始めていた。

 もともとは彼女を少し頭のいい女性だと思っていたが、こんなに短期間で正成の信頼を得て、これほど強力な証拠を提供してくれるとは思わなかった。

 桃の行動は彼にとって驚きだった。

 もしかしたら、この女性は見かけほどか弱くはないのかもしれない……

 桃はしばらく立っていたが、すぐに本題を思い出した。ただ、雅彦の表情が曇ったり晴れたりするのを見て、ためらって口を開けなかった。

 雅彦は彼女のその様子を見て眉をひそめた。「何か言いたいことがあるなら、言え」

 桃は慎重に言った。「私は証拠を手に入れた。あなたが約束したこと、それは有効になりますか?」

 雅彦はその時の約束を思い出した。桃が具体的な証拠を手に入れたなら、彼はその子供を堕ろさないと約束していたのだ。

 結局、この女がこんなに努力しているのは、他の男との子供のためか?

 雅彦の心には、何となく不快な気持ちが広がった。

 「何の責任も持たない男の子供のために、ずいぶんと頑張っているんだな」

 雅彦の言葉には、彼自身も気づかないうちに嫉妬の気持ちがにじみ出ていた。

 桃はその男のことについて話したくなかった。彼女がこの子供を産む決断をした後、それは彼女自身だけの子供となり、たった一粒の種子を残した男とは何の関係もない。

 「菊池さん、これは関係
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