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第382話

美乃梨の緊迫した声を聞いて、桃は何か良くないことが起きていると直感し、急いでスマホを開き、検索をかけた。

すると、ニュースアプリを開いた途端に、一つの見出しが目に飛び込んできた。

「有名な留学医師、佐和が帰国後、国内の患者に国外で承認されなかった薬を実験した。現在、この件に関しては未だにコメントなし」

桃は目を大きく見開き、そのニュースを見つめ、しばらく何が起きたのか理解できなかった。

佐和が、患者に薬を実験したって?

そんなこと、あり得ない。

佐和のことは何年も知っていた。彼の性格を知らないはずがなかった。あの男は、医者になるために菊池家の莫大な財産を捨てた人間だった。そんな彼が、自分の神聖な職業を汚すようなことをするわけがなかった。

桃はさらに記事を読み進めた。そこには、佐和がどのように安全テストを通過しない薬を患者に使用したかが、まるで現場にいたかのように詳細に描写されていた。

専門的な用語が並んで、いわゆる専門家の解説も交えられていて、医療知識のない人には反論の余地がないように見えた。

このニュースは、すでに望んだ反響を得ていたようで、コメント欄は全て佐和を非難する言葉で埋め尽くされていた。

「何てことだ、医者がこんなことをするなんて、人間性の欠如なのか、道徳の崩壊なのか?」

「こんな奴は徹底的に調査するべきだ。他人の命をおもちゃにしている、見逃せる問題じゃない!」

「こんな人間は医者にふさわしくない。免許を剥奪すべきだ、いや、彼の手を折るくらいじゃないと気が済まない!」

これらのコメントを見て、桃は拳をぎゅっと握りしめた。

事態は想像以上に深刻になった。このまま放っておけば、佐和のキャリアと評判は取り返しのつかない打撃を受けることになるだろう。

桃は急いで佐和に電話をかけたが、電話は通話中で、通じなかった。

おそらく、個人情報が漏れ、電話番号が広まってしまい、連絡が殺到しているのだろう。

桃はスマホを握りしめ、心が重く沈んだ。

そんな中、急に携帯が鳴り響いた。

佐和からの連絡かと思い、すぐに電話を取ったが、表示されたのは、海外で母の世話を見ている看護師からの電話だった。

この数年、母の手術は成功したものの、体力は普通の人よりも弱くなっており、桃が帰国する際には、母のために二人の看護師を雇っていた。

この看護師は外国
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