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第357話

桃はその場にしばらく立っていたが、ふと気づくとまた雅彦のことを考えていた。

桃は眉を少しひそめ、額に手を当てて軽く二回叩いた。

「もう考えるのはやめよう。彼のことなんて、私には関係ないんだから」

......

病院の病室内

桃に電話を切られた雅彦の表情は、冷ややかさを増していた。

月は少しの微笑みを浮かべながら、近づいて食べ物を置こうとしたが、雅彦の冷たい声が響いた。

「なぜ君が来たんだ?」

月は一瞬足を止めた。

「あなたが私を嫌っているのは知っているけど、怪我をしたと聞いて、来ないわけにはいかないわ。雅彦、私のことはどうでもいいけど、ちゃんと食事をしないと、お父様やお母様も心配するわ」

月の言葉は可哀そうだったが、雅彦の耳にはまったく響かなかった。

前回、母親がちょうど来ていなければ、月はすでに国外に送られていたはずだ。だからこそ、今日こんなことが起きている。

「僕のことは気にしなくていい。前に言ったこと、忘れたのか?君が今すべきことは、荷物をまとめて国外に出る準備をすることだ」

月は体を震わせ、慌てて雅彦を見た。

「雅彦……」

「荷物を持って出て行け」

雅彦は彼女を一瞥することもなく、冷たく命じた。

月はしばらくためらっていたが、最終的に持ってきた物を手にして、仕方なく部屋を出た。

雅彦の気性を知っていた彼女は、無理に居座れば彼を怒らせるだけだとわかっていた。もしその場で追い出されでもしたら、自分が恥をかくだけだ。

しかし、病室を出た後、月の顔には笑顔が残っておらず、手にしていた物をゴミ箱に投げ捨て、歪んだ表情を浮かべた。

「どうして?こんなに尽くしているのに、いつもあんな態度なんて」

月は感情を吐き出しながらしばらく怒りをぶつけたが、やがて冷静になり、トイレに入りメイクを直した。

鏡に映る完璧に化粧した顔を見つめ、月は冷笑した。

「雅彦、あの女に未練たっぷりみたいだけど、あんたと桃には絶対幸せな結末なんてないんだから」

......

スーパーでたくさんの物を買い込んだ後、桃と翔吾は家に帰った。

家に着いた後、桃はキッチンに入り料理の準備を始めたが、その時、再び携帯が鳴った。

彼女が見てみると、雅彦からのメッセージだった。

「彼女が持ってきたものには手をつけていない」

桃は思わず苦笑した。彼女は返信しよう
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