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第70話

三木直美の顔から憧れの表情が一気に消え去った。

「この話の件について確実だとは言えないけど、ほぼ間違いはないと思う」三木和彦は続けた。「今まで君に教えなかったのは、彼との関係がまだ良好だったからだ。それに、彼の長所がこの欠点を補うと思っていた」

直美は体が冷えて、しばらくして震えながらでワイングラスを口元に運んだ。

「直美、彼は確かに優れているが、大きな欠点も抱えている。彼を美化する必要はない。もし本当に結婚することになったら、君の命を心配する」和彦は上品にステーキを切りながら、穏やかな口調で話した。

「彼にはきっと理由があったんだ……彼が悪い人だとは思わない……」直美は少しの沈黙の後、呟くように言った。「もし彼が本当に極悪人だったなら、私はとっくに気づいていたはず。長い間彼のそばにいたんだから、彼の本性を見抜くことはできると思う」

和彦は彼女の健気さに笑った。「先日、連続殺人犯が逮捕された。その犯人は十年以上逃亡していたが、その間ずっと普通の仕事をしていて、周りの人は皆、彼が誠実で善良な人だと思っていたんだ」

「三木和彦、いい加減にして!」直美は怒りを込めて言った。「私は自分の判断力を信じている。余計なことを言わないで!」

「彼の悪口に耐えられないことはよく分かってたから、今まで言わなかったんだよ」和彦は無邪気な表情で肩をすくめた。「君が頑張るなら続けるといい。いつか諦めたくなったら、家の扉はいつでも開いているよ」

直美は冷たく言った。「必要ないわ。私は自分の不動産を持っているから!」

「どうやら常盤奏からの給料が結構いいみたいだな」和彦は冗談めかして言った。

和彦が三木家の後継者であるため、直美が仕事を始めた後、家族にお金を頼んだことは一度もなかった。

「他のことを言えば、彼は間違いなく良い上司だよ。たとえ彼を手に入れられなくても、彼のそばにいられるならそれでいい」直美は怒りを込めて言い、ワイングラスを持ち上げた。「三千院とわこを追いかけるのがうまくいくように祈っているわ。あなたが女性を追いかけるのに失敗したことがないと覚えているけど、今回も成功するといいわね!」

和彦は自信満々に答えた。「自分に自信はあるさ」そして彼女とグラスを合わせた。

……

一週間後。

常盤グループ。

社長室。

武田が信和株式会社の最新ゴシップを常盤奏に伝
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