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第428話

オフィスのドアが開かれた。

一郎が彼の激しい咳を見て、すぐに歩み寄り、水の入ったコップを彼の手に渡した。

「体調がまだ良くないなら、無理して出社するなって。毎回医者の指示を無視して…」

彼はコップを机の上に置くと、大股で洗面所へ向かった。

一郎は後を追おうとしたが、目の端にパソコンで流れているライブ映像が映った。

「涼太さん、皆さんが気になっているのは、どうして三千院グループと提携を決めたのかということです。彼らが多額のオファーを出したからですか?」記者が笑顔で質問した。

涼太はとわこを一瞥し、微笑みながら答えようとしたが、とわこが先に口を開いた。

「そんなことはありません。涼太さんはエンタメ業界を3年も離れていて、今は新人のようなものだからと言って、お金はほんの少しだけです」

会場にざわめきが広がった。

「三千院社長、あなたと涼太さんはどうやって知り合ったんですか?お二人はとても仲が良いんですか?今日はお揃いの白いセーターまで着ていらっしゃいますし…」記者がさらに突っ込んだ質問をした。

とわこの顔が一瞬で真っ赤になった。

「それは偶然です」涼太が彼女に代わって答えた。「僕は外にコーヒー色のコートを着てきたんですが、ホテルの中が暑くて、さっき脱いだんです」

「涼太さん、復帰後にはいろんな選択肢があったはずですが、三千院グループを選んだのは、三千院社長との親しい関係が理由ですか?いつからのお知り合いなんですか?」

涼太は答えた。「僕が病気だったときに知り合ったんです。この新曲も、その病気の時に作ったものです」

すると突然、会場の誰かがリクエストした。「涼太さん、その新曲をライブで歌ってください!」

そのリクエストに他の人々も一斉に乗っかり、大きな声が上がった。

とわこは彼に微笑みかけると、そっと脇に退き、ステージを彼に譲った。

常盤グループ。

奏が洗面所から出てくると、一郎はすでに彼のノートパソコンのライブを消していた。

一郎は疑問に思った。

別れたはずなのに、なぜ彼女のニュースを追い続けるのか。

彼女が誰と一緒にいようと、それは彼女の自由だ。

なぜ気にかける必要があるのか?

前回の傷がまだ癒えていないというのか?

「奏、家まで送って
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