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第431話

しかし彼女は何も説明する気はなかった。

「子遠、彼に伝えてくれ。とわこは涼太と付き合っているって!」マイクは奏に完全に諦めさせ、とわことの縁を絶たせたかったのだ。

とわこはマイクのデタラメを聞き、すぐに彼の耳からイヤホンを奪い取った。

「子遠、彼の言うことを信じちゃだめ」彼女は冷静に言った。「私と涼太はただのビジネスパートナーよ。それに、このセーターはあなたの社長が返してきたものだから、私がいつ着るかは私の自由。もし将来新しい恋愛を始めたとしても、このセーターを着てデートに行けるわ」

子遠は一瞬黙り、「......」と息を呑んだ。

クソ、マイクめ!

とわこと一緒じゃないって嘘をついていたなんて!

ただただ気まずい。

「三千院さん、あなたの服だから、好きに着て......マイクにただ愚痴をこぼしていただけで、他意はない。それに、俺も気付いたよ。社長は欠点もある。これからは、俺も自分に言い聞かせる」と子遠は申し訳なさそうに言った。

「......彼、今日出社したの?自宅で休んでるはずじゃ?」とわこは落ち着いて尋ねた。

「医者の言うことなんか聞かないからね。でも、一郎さんが彼を家に送り返した」子遠が答えた。

「そう......」

そこから話が続かず、会話が途切れそうになったとき、子遠は突然言った。「成功を祈りますよ。業界No.1になることを目指してね」

とわこは言葉を失った。「......」

その後、マイクはイヤホンを取り戻し、この微妙な会話を終わらせた。

「とわこ、お前手が器用なんだな。いつか俺にもセーター編んでくれよ?」マイクは冗談めかして言った。

とわこは彼を睨みつけた。

マイクはクスクス笑いながら話題を変えた。「奏って、ホントに怖い男だな!まだお前に未練があるみたいじゃん。お前が彼に刺したナイフ、まだ浅かったんじゃない?」

とわこは彼を訂正した。「そのナイフは私が刺したんじゃない」

「そうか......俺は思うんだ、彼の頭、どっかおかしいんじゃないか?」

とわこは落ち着いた声で言った。「昔、成功哲学の本を読んだことがあるの。そこには、成功者と普通の人の思考は違うって書いてあったわ」

「でも、君はすごく普通だよな」マイクが笑いながら言った。

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