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第329話

「保育士とボディガードがいるんじゃないの?ずいぶんと飲んでいなかったし!」一郎はそう言いながら、彼の耳元に寄り添った。「とわこは今日、海外に行ったよ」

奏の目が暗くなった。

突然、飲みたくなった。

一郎が予約したのは屋上のレストランだった。

二人は屋上の手すりに寄りかかり、一人が手にしたボトルを見上げる広大な星空に向かって、静かに飲み続けていた。

春の風がわずかに肌寒く、体の隅々にまで沁み込んでくる。

一本の酒が底をつくと、一郎が口を開いた。「君がはるかに感謝するために、彼女と婚約することに決めたんだって?」

「母が彼女と結婚するように言ったし、とわこも俺と仲良く過ごすように言った。結菜の病気は、実は二の次なんだ」彼は少し頭を上げ、長くてセクシーな首を露わにし、喉が幾度か動いた。彼の声はかすれて響いた。「とわこは俺と決別したがっていたから、その願いに応えたんだ」

彼女がはるかとの婚約を見て、満足するだろう!

「そんな顔をしないで。婚約するだけで、結婚するわけじゃないし。結婚しても、離婚することだってできるよ!」一郎は彼の苦しそうな顔を見て、肩をポンポンと叩いた。「さあ、続けて飲もう」

......

一週間後。

館山エリア幼稚園。

結菜が突然、蓮とレラのクラスの入口に現れた。

今回は彼女の顔に笑顔はなかった。

以前は、彼らに会うたびに甘い笑顔を見せていた。

蓮とレラがクラスから出てきた。

「蓮、レラ、最後の別れを言いに来たの……」結菜の目に、涙が光っていた。

「最後の別れって、どうして?ダメパパ……常盤奏のこのバカが、私たちに会うのを止めたの?」レラは言いかけた言葉を飲み込んだ。

結菜は首を振り、涙が頬を伝った。「私はもうすぐ死ぬかもしれない。もう長くは生きられない気がする」

蓮とレラは彼女をどうしてよいかわからず、心に悲しみが込み上げてきた。

結菜は持ってきたバッグを取り出した。

「私が最も大切にしているものを、君たちにあげたいんだ。君たちは私にとって最高の友達だから」結菜は涙を拭い、バッグから一つ一つのジュエリーボックスや、美しい画集を取り出した。

これらは彼女にとって最も価値があり、好きなものだった。全て常盤奏が彼女に買ってくれたものだ。

レラの涙腺は緩んでしまい、大声で泣き崩れた。「結菜、死なないで!死んじゃダメ
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