第280話

彼女は、三千院すみれと私的に和解するつもりなど全くなかった。

昨夜あえてそう言ったのは、三千院すみれに希望を与え、それを今日打ち砕くためだったのだ。

彼女に、痛みというものを味わわせてやるのだ！

「いいわ！三千院とわこ、本当にいいわ！」三千院すみれは怒りで唇を震わせ、強がって言った。「元々、私は1000億円なんか出したくなかったのよ！私のお金は、降ってきたり湧いたりしてきたわけじゃないんだから！」

「そう。あなたの弟が地獄に行っても、怨霊になってあなたを探しに来ないことを願うわ」とわこは冷笑した。「あの400億円、あなたたちはどうやって山分けしたのかしら？」

三千院すみれは怒りのあまり、血圧が急上昇した！

「三千院とわこ……覚えておきなさい……絶対にあなたを許さない……私の弟の仇、娘の仇……必ずあなたに報いを与えるわ！」

「ふーん、暗殺でもするつもり？」とわこは彼女に忠告した。「日本のシステムと警察の捜査能力は、もう五年前のレベルじゃないわ。人を殺す前に、自分がその結果に耐えられるかどうか、よく考えたほうがいいわよ。日本では、殺人も、殺人依頼も、どちらも死刑よ！」

三千院すみれは顔面蒼白で電話を切った。

井上美香はとわこに目を向けて言った。「三千院すみれ、今でもそんなに横柄なの？」

とわこは答えた。「彼女は海外で化粧品会社を経営して、かなりの利益を上げているわ」

井上美香は目を伏せ、もう何も言わなかった。

「お母さん、彼女が会社を立ち上げたお金は、全部彼女の弟が巻き上げたお金よ」とわこは母親が何を考えているかを察していた。「どんなに彼女が商才を持っていても、彼女が父を害し、三千院グループを破産に追いやったことは変わらないわ！彼女は必ず報いを受けるわ！」

井上美香はうなずき、「彼女の娘があんなに若くして亡くなったのは、まさにその報いよ。とわこ、私はただ、あなたが元気でいてくれることが一番大事。お金なんて関係ないわ」と言った。

夜。

周防がマイクに電話をかけ、飲みに行こうと誘った。

マイクが自宅で電話を受けると、とわこはすぐ彼を見つめた。

昨夜、マイクは飲み過ぎた為今夜は家で食事をするつもりだった。

しかし、周防からの誘いを断るのは難しい。

「昨夜、飲んだばかりじゃない