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第112話

「今朝、彼にうつ病の薬を出したんですが、飲みませんでした」と医者は困った顔をした。「薬を飲まなければいけません」

「明日、彼とじっくり話してみます」と常盤夫人は言った。

医者は言った。「彼は三千院とわこの言うことをよく聞くようですから。もしかして…」

「ダメよ!彼がこうなったのは、全部彼女のせいだ。あの女は、奏に不幸しかもたらさない」と常盤夫人は感情を抑えきれずに叫んだ。

医者はそれ以上何も言わなかった。

彼の仕事は常盤奏の健康管理ということだ。

「あなたがわざと三千院とわこのために言っているわけではないのは分かっている…明日話そう。彼が私の言うことを聞いてくれるかどうか」と常盤夫人はすぐに妥協した。

彼女は奏が早く回復することを望んでいる。他のことはとりあえず後回しにするつもりだった。

......

とわこはお風呂から出た後、窓辺に立ち外の雪を見つめた。

地面はすっかり白くなり、まるで銀色の服をまとったかのように、夜が一層明るく感じられた。

彼女の心の中にある衝動が湧き上がってきた。

携帯を手に取り、常盤奏に電話をかけようと思った。

彼の声を聞きたかったのだ。

けれど彼が電話に出ないかもしれないと考え、メッセージをボイスに変えることにした。

彼の声は聞けなくても、せめて自分の声を届けて、ずっと彼を気にかけていることを伝えたい。

メッセージを送り終えると、彼女はリビングに移って毛糸を手に取り、セーターを編み始めた。

静かな世界の中で、心も次第に落ち着いていった。

夜中の二時過ぎ、常盤奏は悪夢にうなされて目覚めた。

彼の額には汗がびっしりと浮かび、その瞳には珍しく恐れと不安が宿っていた。

ここ数日、毎晩彼は自分が死ぬ夢を見ていた。

それが最も恐ろしいことではなかった。

恐ろしいのは、夢の中で彼の死体が不完全で、血まみれで、顔が見分けられないことだった。

彼はただの腐った肉の塊になってしまった!

周りにはただハエとゴキブリがたかっているだけだった。

目を覚ますたびに、彼は自分自身に嫌悪感を抱かずにはいられなかった。

彼は携帯を探し、開いて時間を確認した。

手が滑ってLineを開いてしまい、とわこのアイコンが目に入った。

彼の指は震えながら彼女とのチャットを開き、送られてきた音声メッセージを見つけた。

彼は音声メッ
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