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第435話

北條守が九位の禁衛府兵士に左遷されたという知らせは、結局老夫人の耳に入ってしまった。老夫人はそれを聞くと、胸を叩いて嘆き悲しんだ。

彼女は口汚く罵り、葉月琴音という厄災を家に迎え入れたせいで、守の前途が絶たれてしまったのだと言った。

老夫人は使いの者を遣わして琴音を呼びつけようとしたが、琴音は完全に無視し、老夫人の側近の婆やを追い返してしまった。

これには老夫人も激怒した。彼女は敷布団を叩きながら守に向かって言った。「一体どうしてこんな落ちぶれた女を嫁に選んだのよ?家の不幸だわ!」

涙と鼻水を垂らしながら、老夫人は続けた。「あの女が嫁に来る前に私に会いに来たときは、私をすっかり喜ばせたものよ。『私たちの前途は心配ありません。将軍家に私たち二人がいれば、きっと出世なさいますわ』なんて言ってたのに。結果はどうなの?今じゃあなたは九位で、巡視兵の仕事だわ。何の前途があるっていうの?」

朝廷で左遷されたり、品級を下げられたりすることは珍しくなかった。しかし、一気に九位まで降格されるとは。京都で九位の官吏などいるのだろうか?小役人にさえ軽蔑されかねない。

北條守は静かに傍らに座っていた。以前のことを思い返すと、まるで一生分の時間が過ぎたかのように感じられた。

琴音を連れて帰ってきたあの時のことも、頭の中で少し曖昧になっていた。

ただ覚えているのは、上原さくらに言った言葉だった。母親が琴音をとても気に入っていること、そして将来琴音との間に子供ができたら、嫡母であるさくらに育ててもらうこと、さらに家政の権限も奪わないということを。

当時の自分は、十分慈悲深い行為だと思っていた。

今思い返すと、少し滑稽に思える。まるで金持ちに「銅貨一枚をあげるから、感謝しなさい」と言うようなものだった。

彼はさくらのことを本当に理解していなかった。武術の修行に送られたことは知っていたが、彼女のような高貴な女性が、どれほどの腕前を身につけて戻ってくるというのか?

琴音から女性についての話を聞いて、彼の認識は完全に覆された。世の中にこれほど自立し、強い女性がいるとは知らなかった。さらに、並外れた精神力と忍耐力を持つ女性がいるとは。

彼はさくらがそこまでではないと思っていた。しかし、さくらを裏切りたくもなかったので、琴音を平妻として迎えようとしただけだった。

後になって事態が
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