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第441話

「お母様!」北條涼子の目は興奮を隠しきれずにいた。「儀姫が連れて行ってくださったの。お誕生日の宴で、わたしを北冥親王の側室にしてくださるそうよ」

老夫人の死んだような目に、突然光が宿った。彼女は体を起こそうと努めながら言った。「本当なのかい?」

「もちろんです。儀姫がわたしに直接おっしゃったのよ。大長公主もそばで聞いていらっしゃいました」

老夫人の胸は高鳴り、全身の血が巡るのを感じた。息遣いも荒くなる。「もしそれが叶うなら、大長公主と儀姫は私たちの恩人だね」

しかし、すぐに眉をひそめた。「でも、なぜあの方たちがそこまで助けてくれるの?何か企みがあるんじゃないかね。喜ぶ前に、母さんにちょっと考えさせておくれ」

涼子は立ち上がり、足を踏み鳴らした。「お母様、どんな算段があろうと、わたしが親王家に嫁げればいいんです。上原さくらの下に置かれたって構いません。わたしの方が若いんですから。再婚した女なんかに負けるわけがないわ」

彼女は風のように座り直すと、続けた。「それに、大長公主は人の縁を取り持つのがお好きですもの。きっと上原さくらが気に入らなくて、わたしを使って彼女を困らせたいんでしょう。何か企みがあったとしても、側室になれば、できる範囲で協力すればいいんです。所詮側室ですもの、大したことはできないでしょう」

老夫人は考え込んだ。確かに理屈は通っている。

しかし、以前の大長公主の誕生日宴での出来事が頭から離れず、事態はそう単純ではないと感じていた。

「お母様。今や守お兄様は九位に落とされ、父上も正樹お兄様も昇進の見込みはありません。葉月琴音はお母様に逆らい続け、夕美お義姉様は西平大名家の後ろ盾があるとはいえ、嫁入り道具で将軍家を支える以外に何もできそうにありません」

老夫人は考え込んだ。確かにそうだ。北條森に期待をかけるわけにもいかない。あの子は秀才試験すら通れないのだから。

このままでは、どうやって将軍家の威厳を取り戻せばいいのか。

大長公主と儀姫に良からぬ意図があるのは明らかだった。しかし、涼子が北冥親王の側室になれるなら、他の代償は後回しにして、まずは身分を確保すべきではないか。

老夫人は口を開いた。「具体的な計画は聞いたのかい?」

涼子は儀姫から聞いた計画の詳細を老夫人に話した。老夫人はしばらく考えた後、この計画は単純ではあるが、効果はあ
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