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第315話

茶屋を出たさくらは、怒りと笑いが入り混じった気持ちだった。

この親房夕美はどんな頭をしているのだろう?北條涼子の話を信じるなんて。

北條涼子がなぜさくらについてこのような噂を流しているのか、よく分かっていた。あの日の恵子皇太妃の雪見の宴で何が起こったのか、後で知ることになった。

北條涼子は影森玄武に目をつけ、玄武の側室になりたがっていた。

彼女がこのようなことを親房夕美に言ったのは、親房夕美が門前に来て騒ぎ立てれば、そのような話を影森玄武が聞いて信じれば、自然とさくらを冷遇したり嫌うようになるだろうと考えたからだ。

少なくとも、北條涼子はそう考えているに違いない。

親房夕美の性格は、良く言えば率直、悪く言えば軽率で、他人の影響を受けやすく、扇動されやすい。

将軍家が本当に家を取り仕切れる人を見つけるのは、そう簡単ではないようだ。

しかも、親房夕美と葉月琴音の性格を考えると、彼女たち二人の間がどうなるか、ほぼ想像がつく。

あの日、さくらは敵対したり誤解を生んだりしないよう、会って大部分を正直に話すことを選んだ。ただ、後で夕美の心中を察して、あまり詳しく話さなかっただけだ。

もし彼女が北條涼子の話を信じたのなら、そのまま信じさせておけばいい。

さくらの前で騒ぎ立てさえしなければ、好きにさせておけばいい。

帰りの馬車の中で、お珠は憤慨していた。一枚の扉越しにさくらと老夫人の会話が聞こえていたからだ。

彼女は怒りで顔を曇らせ、言った。「北條家の人たちは何か病気なんでしょうか?離婚してこんなに経っているのに、まだ関わろうとするなんて。私たちはもう二度と付き合うつもりはないのに。北條涼子のどんな悪意があるか、誰だって分かりますよ。彼女はただ親王様の側室になりたいだけです」

さくらはお珠の可愛い鼻先を軽くつついて言った。「私が怒っていないのに、あなたが怒る必要はないわ。怒って自分を傷つけるのは価値がないわ」

「お嬢様がどうして怒らないんですか?お嬢様は一番怒りっぽいはずです」お珠は少し悲しそうに言った。「以前、梅月山にいた時、誰かがお嬢様を侮辱したり、噂を広めたりしたら、すぐに乗り込んでいって相手を殴りつけていたじゃないですか」

梅月山の話が出て、さくらは本当に不機嫌になった。

師匠が来ない、誰も来ない。

眉間に憂いを浮かべて言った。「昔は昔よ
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