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第314話

さくらはあの日、詳しく説明しなかった。主に三姫が北條守にかなり満足しているように見えたからだ。

もし直接、北條守も自分の持参金を欲しがっていたと言えば、三姫の怨恨と疑惑を招くだけで、故意に中傷していると思われるだろう。

「でも、私のバカな娘は、宰相夫人が尋ねた時に考えもせずに同意してしまいました。そして、この縁談を断ることは到底できません。その理由は、お嬢様もよくご存じでしょう」

さくらはうなずいた。「大体分かります」

要するに、親房甲虎が北冥軍を掌握したので、天皇の意向として北條守に親房家の娘を娶らせ、両家を結びつけ、親房甲虎に北條守を引き立てさせようというものだ。

もし西平大名家が同意しなければ、おそらく北冥軍の指揮官が交代することになり、すでに衰退しつつある西平大名家としては、このような好機を逃すわけにはいかない。

「だからこそ、お嬢様はあの日、北條守の悪口を一言も言わなかった。夕美はあなたが北條守の名誉を傷つけなかったと考え、あなたを恨むこともありませんでした」

この言葉は一見論理的でないように聞こえるが、さくらには理解できた。

あの日、さくらはあまり深く考えなかった。ただ親房夕美に会い、話を聞いた後、夕美が北條守に好意を持っていることが分かった。北條守がさくらの持参金を狙っていたかどうかに関わらず、夕美は彼と結婚したがっていた。

つまり、あの日母娘が来たのは、本当に北條守の人柄を知りたかったわけではなく、さくらが北條守に対して恨みや感情を持っているかどうかを確認したかったのだ。

もし恨みがあれば必ず中傷するだろうし、感情があれば敵意を示すだろう。

どちらもなかったので、夕美は安心したのだ。

あの日、親房夕美の心中を見抜いたからこそ、さくらは話を半分にとどめたのだ。

西平大名老夫人は続けた。「将軍家は以前、あなたと離縁して全ての持参金を取ろうとしましたが、北條守は同意しませんでした。彼はあなたの持参金を一銭も取らないと言いました。しかし後に葉月琴音から手紙が来て、半分の持参金を押さえるよう言われ、彼は態度を変えたのです。お嬢様があの日後半を言わなかったので、夕美の気持ちはずっと楽になりました」

さくらは、美奈子が将軍家を本当に管理できていないのだと思った。下僕たちの口が軽すぎる。これほど内輪の事まで、こんなに簡単に探り出されて、し
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