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第226話

客の中に、その怒りの声の主が現在の陰陽頭の長官だと気づく者がいた。

議論は一気に沸騰した。長官自身が選んだ吉日が、どうして喪中であるはずがあろうか。

長官は呆然とする語り部を指さして怒鳴った。「誰に頼まれて太政大臣家を中傷しているんだ?上原太政大臣一族の七傑は全員が邪馬台の戦場で犠牲になった。上原将軍は女性将軍として封じられ、戦場で幾度も功を立て、北冥親王の邪馬台回復を助けた。少しでも血の通った大和国の民なら、太政大臣家に敬意を払うはずだ。それなのにお前は人々を惑わし、上原将軍を不孝だと中傷している。何の魂胆だ?」

ある者が大声で推測した。「もしかして敵国のスパイで、わざと上原将軍を中傷しに来たんじゃないか?」

別の者も大声で同調した。「本当にありえるぞ!みんな忘れたのか?上原家一族は平安京のスパイに殺されたんだ。もしかしたら彼こそが平安京から我が大和国の都に潜伏しているスパイかもしれない。早く官憲に通報しろ!」

語り部は完全にパニックに陥り、激しく手を振った。「違う、違う!私は平安京のスパイじゃない!私は…」

「平安京のスパイでないなら、なぜ上原将軍を中傷する?」

「そうだ、何の魂胆だ?」

「早く彼を取り囲め、逃がすな!」

誰かが叫び、客たちが次々と前に出て語り部を取り囲んだ。逃げられなくなった語り部は、指を突きつけられ追及された。

福田は2階の個室の入り口に立ち、語り部が取り囲まれて詰問される様子を見て冷ややかに笑い、ゆっくりと階段を降りて去った。

陰陽頭長官が直接出向いて事実を明らかにし、さらに官憲に通報したことで、たとえ最終的に大長公主の名前が出なくても、彼女は大きな痛手を負うことになる。これらの語り部たちを買収するのに多額の金を使ったはずだ。

しかし、語り部は一人だけではない。この噂は数日のうちに都中に広まっていた。茶屋や酒場、路地の角、木の下で物語を語って銅貨を稼ぐ者たちは皆買収されていたのだ。官憲が介入し、一人一人調べ上げれば、事態は面白いことになるだろう。

福田が太政大臣家に戻ってさくらに報告すると、さくらは梁梅田ばあやと一緒にハンカチを刺繍しながら、淡々と笑って言った。「事実が明らかになって良かったわ」

福田は今日、特に何人かを茶館に行かせていた。大声で質問した者たちは福田が手配した人々だった。

陰陽頭長官については、
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