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第7話

シャッターを下ろそうとして振り返ると、まるで前世のことのように感じた。

そこに立っていた藤田彦治は、見違えるほど変わり果てていた。

かつての几帳面な彼は、髪は乱れ、無精ひげを生やし、痩せ衰えて別人のようだった。

隣には嘱言が立っていた。彼も随分痩せて、顔色が悪く、どこか具合が悪そうだった。

父子は信じられないという表情で、その場に立ち尽くしていた。

嘱言が突然私に駆け寄ってきた。まるで昔のように抱き上げてほしそうに。

「ママ」という幼い声に、アキラが足を止めた。ちょうど学校から帰ってきた彼女は、その光景を目の当たりにした。

「この人たち、誰?」

アキラは警戒した様子で尋ね、彼らを見つめながら、ゆっくりと私の側に寄ってきた。

私はアキラを抱き寄せ、額を優しく撫でながら淡々と答えた。

「知らない人よ」

そう言って、アキラの手を取り、立ち去ろうとした。

藤田彦治が手を伸ばして私を止めた。複雑な表情で、「すず......」と言いかけた。

私は冷たく返した。

「お客様、当店は時間と数量限定です。もう閉店しましたので、明日早めにお越しください」

心の中で冷笑した。まさか山本つづみを連れてこなかったのね。

きっと近くの観光地に来ただけで、父子で買い物に降りてきて、彼女は車で待っているのだろう。

わざわざ私を探しに来たなどと、思い上がるつもりはない。

「すず、もう止めよう。私が悪かった。家に帰ろう」

藤田彦治は掠れた声で懇願するように言った。

「ママ、どうして彼女もママって呼ぶの?ママは僕のママでしょう!」

嘱言が走り寄って、私の手を掴んだ。

アキラは興奮した様子で、声を震わせながら嘱言を突き飛ばした。

「離して!ママは知らないって言ったでしょ!ママは私のママなの!」

嘱言は倒れ込み、涙目で私を見上げ、私のズボンの裾を掴んで「ママ、押されたよ」と訴えた。

「ママ、僕のこと要らなくなったの?」可哀想そうな声で尋ねた。

昔なら心が揺らいだかもしれない。でも今は、この下手な演技が滑稽にしか思えない。

私は冷ややかな目で一瞥し、アキラの手を引いて数歩下がった。

アキラの手が冷たかった。

私はアキラの手をしっかりと握り、彼女の目をまっすぐ見つめて優しく言った。

「ママにはアキラしかいないの」

アキラは力強く頷いた。

嘱言は大声で
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