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第6話

加藤院長に相談し、ボランティアとして残りたいと伝えた。食事と寝床だけあれば十分だと。

加藤院長は快く承諾したが、こう補足した。

「アキラという女の子に特に気をかけてあげてね」

後で聞いた話では、アキラは六歳の女の子で、両親は健在だという。

ただ、両親がそれぞれ新しい家庭を持ち、彼女だけが置き去りにされたそうだ。

普通なら両親が生きている子供は加藤設には入れないのだが、両親のことを聞いても一切口を開かない。

親に捨てられ、自分でここにたどり着いたと聞いて、仕方なく受け入れたという。

アキラは人と関わるのが苦手で、ほとんど話さず、群れることもない。

さらに、自分を傷つける傾向もあった。

「刃物を持てば、他人を傷つけるのも自分を傷つけるのも、紙一重だ」

他の子供たちは彼女を怖がり、一緒に遊ぼうとしない。

初めて会った時、私には他の子と変わらない子に見えた。

あえて違いを挙げるなら、痩せすぎているのと、異常なほど物分かりが良いことくらい。

他の子供たちが食事の後に庭で遊ぶ中、彼女は台所に来て食器を洗うのを手伝ってくれた。

時には庭の隅でぼんやりと、落ち葉を眺めている。

落ちた葉を一枚一枚拾っては捨てる。

そんな大人しい子が、男の子と喧嘩をするとは思わなかった。

たった一言「親に捨てられたんだろう」という言葉で、男の子の頭を石で殴り、血を流させた。

駆けつけた時には、男の子が泣きながらアキラの仕業を訴えていた。

急いで病院に連れて行った。

後で分かったことだが、男の子は善意からアキラに声をかけたのだという。加藤孤児院の子供たちは皆親がいないのだから、と慰めるつもりだったらしい。

でも、その言葉を聞いたアキラは、まるで急所を突かれたように攻撃的になった。

後悔はしているようだったが、謝ることは頑なに拒んだ。

食事も取らず、言葉も発さない。

この頑固な少女にどう接すればいいのか悩んだ末、心の傷には相応の治療が必要だと思い至った。

「私があなたを引き取りたい。私の子供になって」

その言葉を聞いた瞬間、アキラの虚ろな目に光が宿った。

そして私にしがみつき、まるで普通の子供のように大声で泣き始めた。

死んでいたような心が、生き返ったのを感じた。

藤田親子に傷つけられた私の心も、同時に癒されていくようだった。

「どうして私のお母
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