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第7話

疾斗はそのまま病院の前まで車を走らせたものの、確認しに行く勇気が持てず、ずっと車内で座り込んでいた。昨日見たあの遺体が本当に私なのか......どうしても確認したくない気持ちが湧き上がってきたのだ。

そんな時、突然電話が鳴り響き、彼の最後の希望を打ち砕く知らせが告げられた。

「もしもし、そちらは神崎楓香さんのご家族の方でしょうか?」

疾斗は急いで答えた。「そうです。夫です。あなたは誰ですか?」

「こちらは警察です。昨日、神崎楓香さんが交通事故で亡くなられました。必要書類をお持ちの上、第一病院でご遺体の引き取りをお願いします」

疾斗の手からスマホが滑り落ち、何度も繰り返すように呟いた。「そんな......ありえない......楓香が死ぬなんて......そんなこと、ありえない」

彼は頭を激しくハンドルに打ちつけ、言い聞かせるように声を出す。「これは夢だ......ただの悪夢なんだ、早く目を覚まさないと!」

額から血が滴り落ちる頃になってようやく少し落ち着きを取り戻した彼は、そのまま血にまみれた顔で病院に入り、私の遺体を確認しに向かった。

そして、私の遺体と対面した瞬間、彼の足が力を失い、その場に膝をついた。

これが、私が自分の死後の姿を目にする初めての瞬間だった。全身は血の気が失せて灰色になり、無機質な白布に覆われ、どこか不気味な雰囲気が漂っていた。

疾斗は真っ赤になった目で、私の冷たい手をぎゅっと握りしめ、震える声で叫んだ。

「楓香、わざと俺を驚かせてるんだろ......

もし君が目を覚ましてくれるなら、もう二度と美月には会わないから。

頼む、目を開けてくれ。これからは何でも君の言う通りにするから......

楓香、お願いだ、起き上がってくれよ......」

そんな彼の前に、昨日私を担当した女医が立ち、呆れたように言い放った。

「あなたが、彼女のご主人だったなんて思いませんでしたよ。あなたこそが、自らの手で彼女の生きる希望を断ち切ったのに。

昨日、たった400ミリリットルの血液さえ惜しんだあなたが......今さら愛情深い夫のふりなんか、誰に見せようとしてるんですか?」

どれだけ周りから非難の声が聞こえても、疾斗はまるで耳に入っていないかのように、ただ私の冷たい手を握りしめ、必死に起き上がるよう願い続けていた。

その時、女医がさ
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