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第4話

「疾斗、どうしたの?何を見ているの?」

美月の声に我に返った疾斗は、特に気に留めることなく彼女の車椅子を押して歩き続けた。

「別に。ただ......あんなにダサい靴を履く人が、意外と多いものなんだなって」

その言葉が聞こえてきた瞬間、心がえぐられるような痛みが走った。

美月が甘えるように言う。「ねぇ疾斗、今夜、私の家に泊まってくれる?一人だと、またいろいろ考え込んじゃいそうで......」

疾斗は一瞬ためらったものの、結局頷いた。

その時、自分の心が音を立てて砕け散るのが聞こえたような気がした。

私が亡くなってから、まだそれほど時間も経っていないのに、二人はもう待ちきれないかのように一緒に過ごそうとしているんだ......

それ以上、彼らの親密な姿を追いかける気にはなれなかった。これ以上、心が削られる思いをしたくない。

でも、次の瞬間、私の意思とは無関係に、魂が疾斗のそばに引き寄せられてしまう。

疾斗が美月を優しく抱きかかえて車に乗せるのが見えた。彼女は疾斗の肩に身を預け、彼の胸に寄り添っている。

美月のマンションに着くと、疾斗は彼女をソファに座らせて休ませ、自分は台所に立って、二人分の卵うどんを作り始めた。

私の心の奥底から、苦しみがじわじわと込み上げてくる。

知らなかった。疾斗が料理なんてできる人だなんて......

三年間も彼と結婚生活を共にしてきたけれど、彼が一度でも私に手料理を振る舞ってくれたことなんてなかった。私が体調不良でベッドから起き上がれない時でも、彼がしてくれるのはせいぜい、出前を取ってくれることだけだった。

愛されることと、愛されないことの差が、これほどまでにくっきりとしているなんて。

二人が食事を終え、疾斗が洗い物をしている間、美月はセクシーな寝間着に着替え、寝室のドア口に立って、誘うような目で彼を見つめていた。

けれど、驚いたことに、疾斗は寝室には向かわず、そのままソファに身を沈めて、体を丸めた。

彼はスマホを手にして、画面を開いては閉じ、閉じては開いてを繰り返し、ついに私にメッセージを送ってきたのだ。

「何してる?」

もし以前に、疾斗からこんなふうに自分からメッセージを送ってくれたことがあったなら、私はきっと舞い上がって喜んでいたはず。彼からの「仲直りしよう」というサインだと思えただろうから。

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