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第100話

 彩香の心臓も一気に跳ね上がった。真一がやっとのことで会社のために周村グループとの提携を取り付けたのに、もし価格の問題で台無しになってしまったら、あまりにも惜しい話だった。

 「周村さん、もし価格にご不満があるなら、私たちはもう少し下げることができます。

 ただし、最大で5パーセントまでしか引き下げられません。これが私たちの会社の限界です……」

 彩香は誠実に言った。最大の誠意を見せるために、彼女は直接、最底値を示した。

 「いや、誤解しないで。価格が高いと言っているのではなく、むしろ低すぎると思っているのだ」

 一郎は笑いながら頭を振って言った。

 「価格が低すぎる?」

 彩香は一瞬固まり、自分の耳を疑った。

 彼女は職場に入ってからこれまでに数十回の取引を経験しており、常に客からは価格が高いと言われ、あらゆる手段で値下げを求められてきた。

 価格が低すぎると言われるのは、初めての経験だった。

 「その通り!

 真一、こうしようか。我々周村グループは、御社に10パーセントの利益を譲ることにするが、どうだろう?」

 一郎は笑顔で言った。

 「本当ですか?それは素晴らしいことです!

 周村さん、それでは林社長に代わって感謝いたします」

 真一は大喜びだった。彼は価格についてあまり詳しくなかったが、周村さんが無償で利益を譲ることは間違いなく良いことだと分かっていたので、大歓迎だった。

 「周村さん、本当に冗談ではないのですか?」

 彩香は驚きのあまり呆然とし、信じられない表情を浮かべた。

 真一は素人だが、彼女はプロだ。周村グループの利益率は最大でも16か17パーセント程度であることを知っていた。

 それなのに、今や一郎は10パーセントもの利益を無償でエレガンスグループに譲ろうとしている。このようないい条件はまるで思いがけない幸運が舞い込むことだ。

 彼女はもうこのすべてが現実なのかどうか疑い始めていた。

「山本さん、安心してください。私の祖父は一度口にしたことは必ず実行する人です。彼が冗談を言うことなんてありえません!」

 拓海は急いで言った。

 「そうよ、真一には恩があるので、今回の利益譲渡はその恩返しだと思ってください……」

 一郎は微笑みながら頷いた。

 なるほど、恩返しのためだったのか!

 彩香はやっと納
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