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第395話

 「綾香は、晋也の自己中心的な愛のせいで亡くなったの。確かに、彼は彼女を救ったけれど、同時に彼女を殺したとも言える。彼が綾香に過去を忘れさせようとしなければ、彼女にチップを植え込む必要はなかった。そうすれば、彼女は脳出血を起こしてショック状態になることもなく、救急処置も間に合わないこともないはず。彼は殺人犯じゃないの?綾香の息子である圭介は、晋也に復讐すべきじゃないの?」香織は少し呆れた。

「晋也は綾香を本気で愛している」文彦は香織を犠牲にしてまで晋也を救おうとした。

長年の友人として、彼はその気持ちを理解している。

「彼が本気なら、綾香は彼を本気で好きだったの?綾香が本当に愛しているのなら、なぜ圭介の父親に嫁いだの?それに、綾香に過去を忘れさせることに、彼女の同意はあったの?」香織は、晋也が自己中心的で、一人の記憶を奪い、卑怯さを愛で隠そうとしていると感じた。

「私は絶対に承諾しない、無理よ。私は圭介と仲がいい。圭介に恨まれることはできない。それに、あなたが言うように晋也が綾香を愛しているなら、それは愛じゃなくて、所有欲よ」

他人の妻を無理に奪い、他人の母を強引に取り去るなんて。

「それは愛だ」文彦は言った。

「とにかく、私は絶対に承諾しない」香織は断固たる態度で言った。

「君を助けことがあるんだ。だから、お願いだ……」

「できない。美穂の件には感謝しているし、心に留めているけど、この件については本当に手助けできない。事実はどうであれ、圭介には知る権利がある。我々は誰も奪うことはできない……」

文彦は仕方なく、「わかった」と答えた。

彼は深くため息をついてから、外に出て晋也を呼び入れた。

「申し訳ない」

この言葉は明らかだった。

晋也は目を赤くし、文彦を見つめた。「もしもっと早く彼女に手術を受けさせることを承諾していたら、彼女は……」

文彦は黙ってうつむいた。

実際、事実はその通りだ。

綾香はずっと頭痛を抱えていたが、晋也は彼女の脳内にあるものを取り出す決心がつかなかったから、今日の悲劇が起こった。

実際、香織の言う通りだった。

彼は綾香を救った。

しかし、同時に彼女も殺した。

「はぁ……」

文彦はため息をついた。

晋也は手術台の前に足を進め、もう息をしていない綾香を見つめ、身体が震えた。そして、突然、ドンという音を立
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