第4話

清香は蝶のように知紀の胸に飛び込み、ついさっきまで私を拷問していた悪女とはまるで別人のようだった。

甘い声で言った。「ダーリン、どうして今やっと戻ってきたの？私が来なかったら、この女が潜り込んでダーリンを誘惑してたかもね」

「ダーリンも知らないでしょ、この女がこっそりここに入って何をしてたのか。ほら、家中がこんなふうになってる。だから、もう懲らしめておいたよ」

そう言って、彼女は私の散切りにされた髪を掴み、知紀の足元に引きずり出し、さらには私を蹴りつけた。

「見て、この女はすでに反省してるの。お金を払わせて終わりにしましょうよ」

彼女は純真そうな顔で無邪気を装い、とびきりの笑顔を浮かべていた。

知紀は血と泥で汚れた私を見て、まるで私が誰か分からないかのようだった。

今の私は、彼が心に思い描いていた純白の花とは全くの別人だった。

知紀はすべてが私という侵入者によって壊されたと思い込んでおり、その目には狂気と怒りが渦巻いていた。

「こいつを始末しろ。ただし、苦しまずには死なせるな」

護衛が近づき、私を引きずり去ろうとした。彼らの手を掴もうとしたが、折れた指は思うように動かず、喉も「フー......フー......」というかすかな声しか出なかった。

その場にいた全員、清香も含めて、一瞬驚いた表情を見せたが、すぐに勝ち誇ったような微笑みを浮かべた。

彼女の表情はまるで「見たでしょ？やっぱり私が彼に愛されているのよ。さっきの手加減が甘かっただけ」と言わんばかりだった。

その時、松田さんが食材を手に戻ってきて、驚きの声を上げた。「何でこんなことに......もし紗紀さんが見たら、びっくりするでしょうに......」

そう言いながら、いつものように「夕食は何がいいか」と尋ねるために家の中に入っていった。

私は「奥様」と呼ばれるのが好きではなく、知紀との関係を表に出すのも嫌だったため、彼らは私を「紗紀さん」と呼んでいた。

しかし、松田さんが中に入った時、荒れ果てた光景しか目に入らず、私の姿が見当たらなかった。

彼女は慌てて外に飛び出し「若松社長！紗紀さんがいません！」と叫んだ。

知紀の目には動揺が走り、清香を突き放して青ざめた顔で別荘中を探し回り、完全に取り乱していた。

彼は私がまた逃げ出したと思い込んでいたに違いない。ひまわりが破壊されても私