第366話

ただ、私は少し疑問に思い、尋ねた。「先輩、何か言いたいことがある？」

「ない」

「そうか」

私は少し笑い、時計を見た。「時間が近いので、先に大阪に行かないと」

「君は......」

彼は一瞬躊躇した後、言った。「君と宏、まだ可能性はあるか？」

「先輩」

私はため息をついて笑った。「今はそんなことを考えてる暇はない。もしあなたが彼のために仲裁しようとしてるなら、やめてください」

「仲裁しに来たわけじゃない」

彼は私をじっと見つめてから、少し躊躇しながら言った。「実は......あることを君に話すべきか迷ってる」

「何のこと？」

「藤原家の偽のお嬢様のこと、服部花から聞いたんだ」

山田時雄は少し考えながら言った。「南、考えたことあるか？彼女がどうして君の代わりに入れ替わったのか、その背後に誰がいるのか」

「藤原星華たちでしょう」

多分、他にも何かあるかもしれないけど、今のところはわからないんだ。

この件は明らかに私を狙っていた。

一般人は藤原家のことに手を出でないだろう。

でも、権力を持つ人々、彼女たち以外には、私は敵に回した覚えがなかった。

その考えが浮かぶと、私は急に山田時雄を見て、「あなたは何か知ってるか？」

彼は私の視線を避けた。「いや、ただの推測だ」

彼がそう言うと、私はますます何かを感じて、問い詰めた。「どんな推測？」

山田時雄は少し困った様子で、しばらくしてから言った。「君......君が冷静に対処してくれると約束してくれるなら、教える。ただ、もしかしたら俺の推測が間違ってるかもしれないから」

「できる限り冷静に対処する」

「これを見て」

彼は二枚の写真を私に渡した。「数日前、偶然見かけたんだ。彼らが『服部鷹と結婚しよう』みたいな話をしてるのを聞いて。最初は宏がどうして彼女と知り合いなのか理解できなかったけど、服部花が教えてくれて、彼女が南の代わりに入れ替わったって」

私は写真を受け取ると、すぐに山田時雄の意図がわかった。

二枚の写真には、江川宏とその偽藤原奈子がカフェで一緒にいる姿が写っていた。

私は写真をぎゅっと握りしめ、「ありがとう、先輩......」

「南、事実がこうだとは限らない」

山田時雄は私が感情的にならないようにと、江川宏をかばいながら言った。「もし宏がそうだったとしても、きっと南を