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第104話

吉村総峰は一歩前に出て、マスクを下ろし、「おじいさん、おばあさん、由佳ちゃんを連れてきました。おじいさんが病気だと聞いて、様子を見に上がりましたが、おじいさん体調はいかがですか?」と話しかけた。

「お気遣いありがとう。体調は大丈夫だよ、心配いらない」とおじいさんはにこやかに答えた。

「それは良かったです。由佳ちゃんを送ったので、私はこれで失礼します。由佳ちゃん、またね。おじいさん、おばあさん、またお会いしましょう。山口さん、さようなら」と吉村総峰はマスクを再び着けて病室を出た。

「由佳ちゃん、その友達はかなりイケメンね。いい若者だわ」と祖母は笑顔で言った。

言いながら、彼女は山口清次に目を向けた。

長年の経験から、吉村総峰が由佳ちゃんに興味があることは間違いないと感じていた。

しかし、吉村総峰は加波歩美よりもずっと気配りができる人だった。

由佳は祖母の言葉の意味を理解せず、「おばあちゃん、彼は大スターで、若い女性に人気があります」と言った。

「そうなの?どうやって知り合ったの?」と祖母が尋ねた。

「子供のころ、彼の家は私の家の隣にあって、近所でしたが、その後引っ越しました。まさか再び会うとは思っていませんでした」と由佳は答えた。

「それは本当に縁があるわね!」と祖母は感心した。

「幼馴染と言えるかしら?」

「まあ、そうですね」と由佳は答えた。

山口清次はソファに座って動かず、顔色はますます険しく、目は真っ黒だった。

「由佳ちゃん、今日は一日中働いて疲れているでしょう。おじいさんとおばあさんはあなたの孝行心を知っていますから、早く帰って休んでください。清くん、由佳ちゃんを送り返さないと」とおじいさんが言った。

「仕事」という言葉は、山口清次が祖父母の前で由佳のために用意した言い訳だった。

ただし、祖父母も馬鹿ではなく、山口清次が加波歩美を連れて来て、由佳が一日中来なかったこと、そして彼女が山口清次を無視していた態度から、夫婦の間に問題が再び生じていることは明らかだった。

祖父はすべてに干渉するわけにはいかず、二人に自分で解決させるしかなかった。

「おじいさん、大丈夫です。ここにいておじいさんと一緒にいますから」と由佳は言いかけたが、山口清次は立ち上がり由佳の側に来て、「行こう」と言った。

おじいさんは手を振って「行ってらっしゃい」
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