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第6話

高橋健太は、まさか私が鈴木時矢とそのまま立ち去るとは思っていなかっただろう。彼のそばを通り過ぎる時でさえ、私は彼に一瞥もくれなかった。

彼は少し落ち込んだ様子で、荒れ果てた部屋に座り込んでいた。次々と空になっていく酒瓶。

うとうとしている間、彼は月明かりの下で白いワンピースを着た中村華蓮が踊っているのを見たような気がした。

高橋健太は目を細めて、それが二人が付き合い始めた頃のことだとぼんやりと思い出した。

彼女が彼の誕生日に踊ってくれたあの日のことを。

過去の思い出が蘇る中、高橋健太は手探りでタバコに火をつけた。

彼は確信していた。中村華蓮は自分から離れることなどないと。

ただ怒っているだけだ。これまでだって何度も仲直りしてきたじゃないか。今回も同じはずだ。

その夜、高橋健太は酔い潰れ、ソファで一晩を過ごした。

一方、私も楽ではなかった。ベッドの上で何度も押し倒されていたからだ。

彼は私の腰を抱きながら、耳元で優しく囁いていた。

「華蓮、いい子だね......次は別の体勢にしようか?」

翌日。

鈴木時矢は爽やかな顔で会社の仕事に向かい、私は午後までベッドから起き上がれなかった。

もし今日予定がなければ、そのまま夜まで寝続けていただろう。

身支度を整えた後、私は約束通り、佐々木美咲と一緒に都内で新しくオープンしたカフェに行った。

店内で私たちは楽しく話していたが、突然背後から高橋健太の声が聞こえてきた。

「華蓮......」

彼は憔悴しきった顔をしており、目には血走った赤みが浮かび、顎には無精髭まで生えていた。

しかし、その瞬間、彼は片膝をつき、小さな箱を差し出して言った。

「華蓮、ごめん」

「今まで俺がどれだけ酷いことをしてきたか分かってる。でもこれからは絶対に変わるから。許してくれ」

私は驚いて彼を見つめた。まさかこんな言葉を彼の口から聞く日が来るとは思わなかった。

でも......

もう興味ない!

私は右手の指輪を皆に見せながら、冷淡な口調で言った。

「ごめんなさい、もう彼氏がいるの」

隣にいた佐々木美咲も私の前に立ちはだかり、冷たい目で高橋健太を睨みつけた。

「高橋さん、付き合ってる時は大事にせず、別れてからこんなことするなんて…遅すぎる愛情なんて意味ないわよ!」

私は佐々木美咲の腕を軽く引っ張りながら少
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