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結婚式の日に裏切られた私は、若くてハンサムな彼氏ができた
結婚式の日に裏切られた私は、若くてハンサムな彼氏ができた
著者: 儲け

第1話

賑やかな人混みの中で、私の婚約者が彼の秘書と抱き合ってキスをしている。

私はまるでピエロのように、祭壇上で情熱的なキスを交わす二人を見つめる。

彼らの一人は私の婚約者で、もう一人は彼の秘書の佐々木美咲だ。

司会者は私の登場に気づき、慌ててスポットライトを私に当て、新郎に知らせた。

「高橋さん、花嫁が来ましたよ」

しかし、高橋健太は全くその態度を改めることなく、むしろ佐々木美咲を後ろに引き寄せ、周りの好奇の視線から守るようにした。

そして私は祭壇に立ったまま、周囲からの奇異な目線や嘲笑、数え切れないほどの噂話に耐えなければならなかった。

「私はずっと言ってたわ、高橋健太は中村華蓮のことなんて好きじゃないって。そうでなきゃこんなに公然と彼女の顔に泥を塗るようなことしないわよ」

「中村さんって本当に可哀想だね、こんなに多くの人に見られてるのに我慢できるなんて」

「中村さんはただのヘコヘコ女だわ」

......

周りのひそひそ話を聞きながら、私の顔は徐々に青ざめ、指先は手のひらに食い込んでいった。

それでも高橋健太は少しも態度を改めることなく、むしろ佐々木美咲の手を取ってじっくりと撫でまわした。

周囲の噂話を聞きながら、私はその場に呆然と立ち尽くし、指先の爪が肌に幾つもの見えない傷を残していくのを感じるだけだった。

私が何の行動も起こさないでいると、高橋健太は徐々に我慢の限界に達したようだった。

片手で佐々木美咲を抱き寄せ、もう片手で隣の司会者からマイクを取ると、私を見据えて不機嫌そうに言い放った。

「中村華蓮、来るのか来ないのか。来ないならもう今日の結婚式は中止だ」

そう言うと、彼は佐々木美咲と楽しそうに話し始め、私に目もくれなくなった。

まるで以前と同じように、私が彼を許して喜んでその結婚式に参加するだろうと確信しているかのようだった。

しかし今の私は違う。

一歩一歩、彼に向かって歩みを進める。周囲の噂話や視線など気にも留めずに。

まるで以前、幾度となく彼が私のそばに来てくれたときのように。

だが、彼のすぐ側まで歩み寄ったとき、私は彼から差し出された手を拒み、代わりにマイクを受け取った。

そして彼の目をまっすぐ見つめ、静かに告げた。

「高橋健太さん、結婚式は中止です。もうあなたとは結婚したくありません」

私の言葉が終わると、先ほどまでざわめいていた会場は水を打ったように静まり返った。

しかし高橋健太は嘲笑を浮かべ、冷ややかな目で私を見下ろした。

「中村華蓮、俺たちは5年も付き合ってきて、お前はずっと俺の後ろについて回って、やっと結婚までこぎつけたってのに。今さらそれを投げ出すって、自分で信じられるのか?」

たとえ心が千々に乱れようとも、私はその問いかけにきっぱりと頷いた。

彼は忘れてしまったのかもしれないが、私が彼と結婚することを決めたのも、彼が直接プロポーズしてきたからなのだ。

5年前のあの日、降り積もる雪の中で、彼は私の手を取り、片膝をついて指輪を掲げた。

「一緒になってくれないか」とプロポーズした。

あの時の彼は、私への愛で満ち溢れていた。

だからこそ私は何度も彼を許し、傷つけられ続けてもなお、彼にチャンスを与え続けてきたのだ。

しかし今、私はふと思った。

人生において、誰かなしでは生きていけないなんてことはない。誰を失ったとしても、生きていけるのだと。

彼の得意げな眼差しを受けながら、私は指輪を外し、みんなの前に掲げた。

「高橋健太、これではっきり言います。私たち、別れましょう」

そう言って、私は指輪を彼に向かって投げつけ、大股で会場を後にした。

祭壇を降りると、高橋健太の付き添いの男性が慌てて私を引き止めようとした。

「待ってください、中村さん!健太はただ冗談を言っただけなんです。彼は本当にあなたのことを愛してるんですから。そんな冗談で別れるなんてことないですよ」

しかし高橋健太は顔を強張らせ、私が投げた指輪を握りしめるばかりだった。

あの指輪は、彼が高額でカスタマイズしたものだったはずだ。

だが今や、彼は感情を抑えきれない様子で言い放った。

「行かせろ!あいつがいなくたって、この結婚式は続行できるんだ!」

彼のその言葉に、私を引き止めようとしていた男性も渋々手を引いた。

私は苦笑を浮かべ、そのまま会場をあとにした。

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